第一幕
□11.スリザリン
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1年に1度の、組み分け儀式が今年もまた始まった。
学校に入ってすぐ、右も左もわからないうちに全校生徒の前に立たされ、自らの属性を声高らかに宣言されるのは誰だって緊張する。
家族に魔法使いがいる生徒でもない限り、この組み分けが今後の学校生活を左右することなんて思わない。
エメリーも1年前、帽子を被るまでは組み分けの儀式というもののことはよく分かっていなかったし、不安というよりはむしろ期待に胸を膨らませていた。
帽子に“お嬢様”と言われたときはどうしようかと思ったが、良い友人にも恵まれ、エメリーは楽しい1年を過ごすことが出来た。
エメリーは、グリフィンドールに入れてくれてありがとうごいう気持ちを込めて組み分け帽子を見た。
「シリウス、君の弟の番だよ」
ジェームズがニヤニヤしながらシリウスを肘でつついた。
シリウスは「あっそ」と興味がなさそうな返事をして大きなチキンにかぶりついた。
でも、その目がしっかりとレギュラスを追っていることに、エメリーは気づいた。
『レギュラスもグリフィンドールに来るといいね』
「あいつは間違いなくスリザリンに入る」
シリウスが言い終わるか終わらないかという頃、組み分け帽子の「スリザリン!」という声が大広間に響いた。
「ほらな」
シリウスは鼻で笑った。
「あいつは“いい子ちゃん”なんだよ」
『どういうこと?』
「“高貴なるブラック家”の一員としてスリザリンになるのが当然だと思っているってことだ。うちは代々スリザリンの家系だって言ったろ」
『でもシリウスはグリフィンドールじゃない』
「だから俺は恥さらしな問題児ってわけ」
『どうして?寮だけで?』
「ああ」
「純血の家にはそういう家もあるんだよ」
ジェームズが横から助け舟を出した。
純血の家には選民意識が高い家系とそうでない家系があり、スリザリン寮の人が多い家系は前者が多く……といろいろ説明してくれたが、エメリーには半分も理解できなかった。
『んー、つまり、レギュラスはブラック家だからスリザリンになったの?』
「そうだな。そしてあいつがそれを望んだからだ。俺はスリザリンなんかごめんだ、グリフィンドールにしてくれって帽子に頼んだ」
『そっか。じゃあ、レギュラスは自分が行きたい寮に行けたんだね』
「ああ」
『よかったね』
「あ、ああ……そうだな」
ぼそっと言ったシリウスの表情がいつもよりずっと柔らかい表情に見えて、エメリーまで嬉しくなった。
ジェームズは相変わらずニヤニヤしながらシリウスを見ていた。
***