賢者の石
□[番外編]1-5.ダイアゴン横丁(服屋編)
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女の買い物ほどめんどくさいものはない、とセブルス・スネイプはため息をつきながら、目の前で繰り広げられる着せ替えごっこを眺めた。
めずらしい東洋人の客にうかれたマダム・マルキンは、あれでもないこれでもないと、大量の服を持ってきてはあてがっている。
杖を無事に手に入れてご機嫌なユイは、鼻歌を歌いながら次々と持ってこられる服を来ていた。
『教授!こっちとこっち、どっちのほうが良いと思いますか?』
「どちらでもいいから早く決めろ」
これでもう10回目になる問答に頭が痛くなる。
片方を指定したところで、どうせ『でも……』と言って、自分の気に入ったほうを選ぶに決まっている。
『せめてどっちも似合うよって言ってください』
「……そういった答えを求めるのであれば今後は別の者を連れてくることをお勧めする」
何度聞いたところで答えが変わることなどないとわかっているだろうに、なんで懲りずに聞いてくるのか理解しかねる。
だいたい、ここには制服を買いに来たのであって、ファッションショーを見に来たのではない。
なぜ普段着の調達に付き合わなくてはならないというのだ。
ユイは頬を膨らませていじけたような表情を見せたが、それも一瞬で、すぐに次の服を見ては『かわいい!』とはしゃぎだしていた。