後日談
□再就職
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「彼女は今も昔も変わらず人を引き付ける能力に長けていますね」
「どうでしょうな」
「現にあなたも気になって見に来ているではありませんか、セブルス」
「我輩はこやつらをつまみ出しにきただけです」
スネイプがジロリと睨みつける先には、ひと塊の人影があった。
魔法大臣から闇払い室長、人狼や死神犬まで、スネイプの嫌う者達が群れを成して地下牢教室の後部ドアに張り付いている。
「ホグワーツに授業参観制度はなく監査通達を受けたわけでもはいはずだが――我輩の見落としですかな?大臣」
「ええと、私は印を押した身として、判断が適切であったかどうかを確認に……」
「ほう?闇払い2人と記者を連れて確認とは、ずいぶんとご自身の判断に自信がないようですなぁ」
スネイプはハーマイオニー、ロン、ハリー、ジニーの4人を反対側の壁に立たせ、伸び耳を取り上げて握りつぶした。
「商品が!」という声が聞こえた気がしたが、知ったこっちゃない。
まだ中の様子を窺っている白髪とピンク髪をドアから引っぺがし、伸び耳なしでも声を拾えているらしい黒犬の耳に杖を向けてふさいだ。
「何よ、ケチね」
「そうよそうよ。みんなユイの夢を応援していたんだから、いいじゃない」
「まあまあ、みんな静かに。授業の邪魔になってしまう」
先ほどまで振っていた尻尾の毛を逆立てて唸り声を上げるシリウスをなだめながら、リーマスが開き直るジニーとトンクスをなだめた。
「我々が侵入できたということは、セブルスも大目に見ているっていうことだよ」
「ただ間抜けなだけじゃない?」
「そうよリーマス。目を瞑る気があるなら邪魔したりしないはずよ」
「はは、そこはほら、独占欲が強いセブルスのことだから――」
「いい加減にしろルーピン。我輩はホグワーツ魔法魔術学校校長としての仕事を全うしているだけだ」
呪う勢いだったスネイプは、途中でふと何かを思いたかのように、ニヤリと危険な笑みを口元に浮かべた。
「うげ。嫌な予感」
「だね。帰ったほうがよさそうだ」
「そう急くなポッター……せっかく御足労いただいたのだ学校を卒業して長い諸君に思い出させてさしあげよう……ここホグワーツにおいては校長の権限が絶対でありすべてのしもべ妖精が校長の指示に従い動くことを」
猫なで声でスネイプが言うなり、ボソボソ話すロンとハリーの前にしもべ妖精が現れた。
ハーマイオニーやジニー、リーマスたちの前にもいる。
まずい、と思ったときには遅く、スネイプが手を上げると同時に「パチン」の合唱が起こった。
その場に居たマクゴナガルを覗く全員が、“気をつけ”状態のまま、さらし者のように廊下に並ばされた。
教室内の様子は当然わからない。
おそらく何も知らず、7年生の授業が行われているのだろう。
ユイが騒動に気づくのはチャイムが鳴った後。
ピーブズによって「反省中」の札を下げられた大人達を見て、生徒たちが騒ぎ出してからだ。
Fin.