後日談
□報告
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雪が積もった馬車道を通り、ユイはマルフォイ家に向かっていた。
自分の家に“向かう”というのも変な話で、“帰る”が正しいのだろうが、ユイはまるで初めて訪問したときのように緊張していた。
もっとも、初めてマルフォイ家を訪れたときは緊張ではなく楽しみだという気持ちが大多数を占めていたのだが――
心を落ち着かせようと思って隣を見れば、いつもと変わらない表情のスネイプがいた。
無表情の中にも緊張の色が見える気がするのは、ユイがそれだけ緊張をしているからだろう。
2人はこれからルシウス達に結婚の報告をしにいくところだった。
「どなた?」
門で合図を送るとナルシッサの声が返ってきた。
『ユイです。あ、スネイプ先生もいます』
「――どうぞ」
わずかな間の後に音もなく錠が開き、門は黒い霧のようになって消えた。
長いアプローチを通って玄関に向かう間、ユイはスネイプがルシウス達にどう話すのだろうかと考えた。
いくらなんでも定番の娘さんを僕に〜の下りは使わないだろうということは想像がつくが、では代わりに何をと考えると見当もつかなかった。
怖いもの見たさで定番の下りも見てみたい気もする。
*
出迎えたナルシッサに続き、ユイは他人行儀で大広間に入った。
大広間には長テーブルが置かれ、端にルシウスが座っている。
ドラコは暖炉を背にして座っており、その正面にナルシッサが座った。
テーブルに食器が置かれているのを見て、そういえば帰ってきたら夕食だったということをユイは思い出した。
『あ、すみません、ええと……』
「想定内だ。かまわない」
ルシウスは2人に座るように言った、
視線の先には既にスネイプの分も含めた食器が用意されている。
2人が席に着くとすぐに皿に料理が現れ、グラスにワインが注がれた。
そして話を切り出す間もなく晩餐が始まってしまった。
こうなってしまっては食事が終わるまで話はできない。
ユイは仕方なく料理に手をつけた。
*