後日談

□12.絵画
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5月。

ハリーポッターが闇の帝王を破って1年が経った。

世間では1周年を祝う式典が催されたり新聞に特集記事が組まれたりしていたが、ホグワーツの雰囲気はお祝いとは程遠かった。

パーティ開催を望む生徒もいたが、試験を控えた5年生と7年生がピリピリしていてとてもじゃないが口にはできなかった。


ハーマイオニー達のように学校に残って7年生をやり直した生徒はまだよかった。

もちろんハーマイオニーは誰よりもピリピリしていたが、それでも去年やるべきだった学習を今年やっただけに過ぎない。

その1つ下――ジニー達の学年が最も負担が大きかった。

6年生の内容と7年生の内容を1年で詰め込まなければならず、それに平行して就職先のことも考えなければならない。

クィディッチの寮対抗杯最終戦をも控えるジニーの口癖は「ウッドの体力はどうなってたのよ」だった。

その目がときどき虚ろになり、試験をせずに卒業をしていったロンやフレッド、ジョージの悪口になることをハーマイオニーが心配していた。


1年のブランクがあるため、多少の“お情け”を期待していた生徒達は、例年通りの難易度の問題が出されると聞き、落胆の色を隠せなかった。

スネイプがそのことを発表し「多方面の実戦を積んだ諸君らには過去最高の成績を期待する」と嫌味たっぷりに言ったときには大広間が憎しみで溢れかえった。

開心術がまったくできないユイですら、彼らが何を考えているのか手に取るようにわかった。


こんなときは誰もが敵を探したいのだ。

自らが憎しみの対象になることで余計ないざこざ――特に寮対抗杯を控えた選手たちの嫌がらせの応酬は連日続いていた――を減らしているに違いない。

そうユイは信じてやまなかったが、誰に話してもその考えは理想にすぎないと否定された。

だってストレスが余計に増えるだけなのだからと言われたら、ユイも反論できなかった。

結局、ハリーがヴォルデモートを打ち破った日は夕食がいつもよりも少し豪華になっただけだった。




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