後日談

□11.日本
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「とても許可できるものではないな」



翌日戸籍の礼とスネイプの付き添いの話をしたところ、ルシウスに一蹴された。

当然のように一緒に行けると思っていたユイは、なぜだどうしてだとくってかかった。



「少し考えればわかりそうなものだが」



ルシウスは眉をひそめ、ため息をつきながら言った。

ルシウスの隣でドラコもうんうんと首を何度も縦に振っている。

これではユイが非常識人のようだ。



『教授には今まで何度も付き添って頂いていますし、家にお世話になったこともあります。どうして今さら駄目なんですか』

「嫁入り前の娘を男と2人で旅行させる親がどこにいる」

『いますいます。いっぱいいます!というか言い方の問題です!』



旅行ではなく付き添い、保護者扱いなのだとユイは説明したが、ルシウスは聞く耳を持たなかった。



「セブルスに下心がまったくないとでも?」

『なっ、ないですよ!』

「そうか。しかしユイにはあるようだしあいつとてわからんだろう」



ルシウスはユイがスネイプと旅行すること自体を楽しみにしているということを的確に見抜いた。

ユイは1人では行けない行きたくないと年概もなく駄々をこねた。



「ではドラコと行けばよい」

「えっ」



驚いたのはユイだけではなかった。

名前を出されたドラコも、突然のことに目が点になっている。



「どうして僕なんですか?父上が行かれたほうがいいのではないですか?」

「国外逃亡を疑われたのではかなわないからな」



ルシウスは暗に自分に監視がついていることを言い、魔法省の悪口を挨拶程度につけ加えた。



***



その後ユイの日本行きを聞きつけた何人かから一緒に行きたいと申し出があったが、結局ドラコと行くことは変わらず当日を迎えた。



「成人してるくせに1人で旅行のひとつもできないなんて恥ずかしいやつだな」



魔法省に向かう馬車の中、頬杖をつきながらドラコが鼻を鳴らした。

このところドラコはユイの顔を見るたびに文句を言う。

ここ数ヶ月、ユイのせいで散々だというのがドラコの言い分だ。

スネイプがドラコに冷たく当たっていたことは知っていたため、大人気ないと言ったのだが「被害妄想だ」と言って取り合わない。


それでもスネイプの対応はまだマシなほうだった。

相手がドラコということもあってか、グリフィンドール生は容赦がなかった。

フレッドとジョージはドラコが“なぜか”体調不良になり“仕方なく”誰か他の人を連れて行くことになるようにと、ズル休みスナックボックスフルコースを偽名で郵送してきたらしい。

それでもドラコが1度も辞退しようとしなかった理由は、父親の言いつけだからというだけではない。



『ドラコだって日本のクィディッチチーム――豊橋天狗だっけ?調べたりして楽しみにしてたじゃない』

「そ、それはついでだ」

『ふーん』

「だいたい、僕は貴重な時間を割いてお前の用事に付き合ってやっているんだ。少しくらい好きなことをしてもいいだろう」

『そりゃもちろん、いいけど』

「じゃあ文句言うな」

『文句言ってるのはドラコでしょ』

「うるさいな。着いたから降りるぞ。転ぶなよ」

『平気よ、ありがとう』



先に下りてユイに手を出すドラコにユイは微笑んだ。

なんだかんだ言いつつもエスコートはしてくれるのだ。



「それにしても国際間の移動手段が準備されていて助かったな」



すっかり機嫌を直してニヤリと笑うドラコにユイは苦笑いを返すしかなかった。
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