後日談
□08.勝利記念パーティ(前編)
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勝利記念パーティを担当することになり、ユイの日常はがらりと変わった。
ハロウィーンパーティを楽しむ余裕もないくらいに忙しくなり、毎日校内を駆け回り卒業生名簿を集めたり過去のパーティの資料を漁ったりする日々に追われる。
校長室へは夕食後に向かうのが日課になった。
『招待客リストの最終確認をお願いします』
ユイは1メートルはあるのではないかと思われる羊皮紙をスネイプに渡した。
何度も丸めたり伸ばしたりしている紙は、古い書物のようにくたくたになっている。
『マクゴナガル先生とフリットウィック先生にもご協力頂いたので漏れはないかと思いますが』
「では問題なかろう。卒業生に関しては彼らのほうが詳しい」
『スネイプ先生も一応見てください』
校長なんですから、と言ってユイは次々とカバンから巻紙を出した。
『あとは料理案と、生徒向け注意事項案と、ゲスト案のリストと――』
「ゲスト案?」
料理案も注意事項案も不要だと言わんばかりに眉をひそめていたスネイプは、3つ目の巻紙をユイの手から取った。
『BGM担当です。妖女シスターズでいいかなとも思ったんですが、フリットウィック先生の元教え子で楽団に入っている人もいるみたいで、その方たちにお願いするのもありかなあと。あ、こっちが演奏しているジャンル一覧です』
「……そんなところまで調べたのか」
次から次へと出てくる羊皮紙に、スネイプは目を見張った。
褒め言葉と受け取ったユイは、得意気な顔で『まだまだありますよ』とさらに5,6本の羊皮紙を取り出した。
「寝ずに作業しているのではあるまいな?」
『寝てます。心配ありがとうございます』
「担当者が準備開始早々倒れたのでは目も当てられませんからな」
『大丈夫ですよ。むしろ楽しくて元気いっぱいです!』
ユイはにっこり笑った。
やることがないと不満を口にしていたころに比べれば、忙しくとも充実しているほうが楽しいに決まっている。
それこそ寝る時間も惜しんで作業したいくらいだ。
『それで、招待客リストは問題なさそうですか?』
「半狼と狂犬が混ざっていること以外は問題なさそうですな」
『はーい。じゃあこのままいきますね!』
ユイは前半部分を聞き流し、スネイプに返却された羊皮紙を巻きなおした。
口ではひどいことを言っているが、以前のような憎しみは感じられない。
思えばリーマスがパーティの話をしにきたときもそうだった。
スネイプは相変わらずの態度で不機嫌オーラを撒き散らしてこそいたが、リーマスを追い返すこともなく、ユイの予想に反してパーティの開催も許可した。
ユイがリーマスに説教されたことを話したときは、「当然だルーピンの言い分が正しい」とまで言った。
おそらくスネイプの中の彼ら――といってもシリウスはどうだかわからないが――に対する意識が変化してきているのだろう。
あとは嫌味を言うのを控えたり、不機嫌な態度を取るのをやめたりしてくれれば完璧なのだが、いきなりそこまで望むのも難しい。
それに、さすがにグリフィンドール組みと手と手を取り合って仲良くしている姿は想像ができない。
なんにせよ、少しずつではあるが、わだかまりが消えつつあるのだと思うとユイは嬉しくなった。