謎のプリンス

□6-4.5 闇の帝王と予言
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それから数週間、ユイは一切外に出ることなく暮らした。

毎日の大半を本を読んで過ごし、スネイプの許可が下りれば手紙を書いたりもした。


シリウスから話を聞いたらしい、ハリー達からは「マルフォイ邸を出たなら隠れ穴に来るべきだ」と猛烈に勧誘された。

中でもハーマイオニーは、ユイの成績表を見たいと何度も手紙を寄越した。



「グレンジャーはよほど自分より上の者がいるのを認めたくないようですな」

『そういうわけじゃないと思いますが……試験内容を知っていたぶん有利だから、なんか申し訳ないです』

「分かっていたところで出来なければ意味はないのだから謙遜することはあるまい。数年前から準備をしてきた成果であろう」



全ての科目に“O・優”の記載がされた成績表を見ながら、スネイプが鼻を鳴らした。

当然のことながら学年トップの成績だ。

自寮生からオールO(優)が出たことが嬉しいのか、成績が届いた日にスネイプは珍しくユイを褒めた。



『ありがとうございます。フクロウの数だとハーマイオニーの方が上なんですけどね』

「……どこぞの寮監と同じ事を言うな」



マクゴナガルの得意気な顔を思い出したのか、スネイプは僅かに顔をしかめた。

ユイは、占い学を取っていない分ハーマイオニーよりも受験した科目数が少ない。

そのため、合格した科目の数も、おのずとハーマイオニーの方が多くなる。

マクゴナガルは、フクロウの数でスネイプの自慢に応戦したのだろう。



『そういえば、今さらですが占い学をとってなくても魔法薬の教授になれますよね?』

「まだそんなことを言っているのか。いい加減に真面目に進路を考えたまえ」

『大真面目ですよ!自分が防衛術の席につけたからって、手のひら返したように否定するのやめてくださいよ』

「否定しているわけではない。その成績なら他にいくらでも道はあるだろうと言っているだけだ」

『魔法省には興味ないですし、癒者もいいかなぁと思いますが、魔法薬の方が無限の可能性があって楽しそうじゃないですか』

「教師である必要はあるまい」

『まあ……それは、そうですけど……』



正直、進路についてはあまり真面目に考えていなかった。

ユイの知っているハリー・ポッターの世界は2年後の大きな決戦までで、その先のことはどうしてもピンとこない。

もし、思い通りに事が進み、スネイプがホグワーツに残ることが出来るようになったなら、自分もホグワーツにいたいという漠然とした思いから教師を選んだわけだが、それを本人に言うわけにもいかない。



『教師じゃダメな理由でもあるんですか?』

「……飛行術の成績は、実に記録的なものでしたな」

『ま、まさか』

「箒に乗れないのは論外だそうだ」

『えええええっ!そんな話聞いてないですよ!』

「でしょうな。我輩も言った記憶はない」

『ハンドルつきなら――』

「いいはずなかろう」

『乗れることには変わりないので――』

「試験は学校用の箒を使用する」

『なんとかごまか――』

「ごまかせるはずあるまい」



次々とユイの提案を封じ、スネイプは気乗りしないことがありありと分かる態度でこめかみを揉んだ。



「もし、本気で目指すというのであれば、自力でなんとかするのですな。先に断っておくが、我輩は一切手伝うつもりはないからそのつもりでいたまえ」

『……の、乗れるようになってみせますよ!』



いつもなら『なんだかんだ言って手伝ってくれるくせに』と言い返すところだが、さすがにもうスネイプに他のことに構っている余裕は残っていないだろう。

どうやら決戦後に最初にやることは箒の練習になりそうだと、願ってもいない平和な未来が1つ、ユイの頭の中で確定した。



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