不死鳥の騎士団
□30.二度目の戦いへ
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神秘部で事件があってから、日刊預言者新聞は連日ヴォルデモートの復活について取り上げていた。
魔法省のコメントはもちろん、アンブリッジ停職の記事やダンブルドア復職、ハリーについての記事など、新聞はすべて事件のことで埋め尽くされていた。
その中には、神秘部でお縄になった死喰い人達の記事もあった。
『ルシウスさん……』
アズカバン送りにされたメンバーの中でもとりわけ大きく取り扱われている義父の姿を見て、ユイは肩を落とした。
シリウスを救うことには成功したものの、すべてが思い通りに進んだわけではなかった。
まず、ハリーに正体がバレてしまった。
そのため、シリウスが死んでいないことが予定より早く知られ、蘇生する役回りをリーマスに取られてしまった。
大したことではないのだが、この機会にスネイプの印象を良くしておきたかったから残念だ。
もっとも、本人達はそうならなくて良かったと思っているようだが――。
教職員席に目を移すと、スネイプは普段通りむっつりと押し黙って座っていた。
アンブリッジの記事を読んだフリットウィックが笑顔でスネイプに話しかけ、それに何度か頷いているくらいで、新聞にはあまり興味がないらしい。
スネイプはあの後、一度もユイと口を利こうとしてくれない。
秘密裏にシリウスと計画を練り、スネイプが手伝わざるを得ない状態にしたことをよほど怒っているらしい。
ハリーと入れ違いでブラック邸に行った時も、目すら合わせようとせずにさっさと1人で帰ってしまった。
今も、ユイと目が合いそうになると、読む気がない新聞に目を落としている。
対照的に、新聞を食い入るように見つめているのが、ユイの正面にいるドラコ達だ。
青白い顔で、今にも新聞を引き裂きそうなほど手に力を込めている。
自分達の父親が、罪人として叩かれているのだから無理もない。
シリウスのことで頭が一杯で、ちゃんとした逃げ道を準備してこなかったことが悔やまれる。
談話室に戻ってからも、ドラコは黙って新聞を睨みつけていた。
さすがのパンジーも声をかけられないらしく、遠目で心配そうにこちらを見ている。
『いずれ知れることだろうから、先に言っておくわ』
ユイはドラコの元へいき、声を低くして囁いた。
『私、神秘部にいたの』
「なんだって!?」
『しー、静かにっ』
「……」
ドラコは眉をひそめ、それから立ち上がってユイを談話室の外へ連れ出した。
日曜日にしても、廊下は静か過ぎるようだった。
談話室にいない生徒達は皆、太陽がいっぱいの校庭に出て、試験後の復習も宿題もないひと時を楽しんでいるに違いない。
誰もいない廊下で、ドラコはユイに顔を付き合わせた。