不死鳥の騎士団

□19.魔法省の企み
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クリスマスパーティを境に、ユイは元気を取り戻した。

分かりやすすぎる変わりように、ドラコの心境は複雑だった。

落ち込んでいるよりはよっぽどいいが、学校のような変人っぷりを家でも見せられるのはあまり喜ばしいことではない。


15歳の女の子らしく、ナルシッサと共に着飾ったりお菓子を作ったりして楽しめばいいものを、ユイときたら、マルフォイ家の闇の魔術関連の品々にばかり興味を示している。

今日も朝からルシウスと呪いの発動条件がどうとか、無言呪文がどうとか、危険な会話を繰り広げている。



『許されざる呪文を使った場合って、魔法省に記録が残るんですか?』

「未成年が校外で使用した場合はその都度通達されるが、それ以外は目の前で使用しない限り役人に知られることはない」

『目の前で使用しても、無言呪文で杖を使わず、閃光の色も違かったら気づかれないんじゃないですか?』

「ふ……完全犯罪か。我が娘ながら末恐ろしいね。いったい誰を暗殺する気なのだか」

『違いますよ!単なる学術的見解をですね――』

「それはそれで将来有望だな。あとで発動条件の省略と効果に関する本を貸してあげよう」

『ありがとうございます!わー!楽しみっ』



朝食時に、父と娘が、笑顔で闇の魔術について語る――。

違和感しかない。

スネイプがいれば多少は違うのだろうが、明後日から始まる学校の準備で昨日から出てしまっている。


(本来なら今までここにいたこと自体がおかしいんだけど)


今回ばかりは家族だけで過ごせるかと思っていたのに、2日に1回のペースでスネイプはやってきた。

表向きはルシウスとの会合だが、本当の目的が別のところにあることくらい、嫌でも分かってしまう。

スネイプがいたらいたでやりにくいが、いないとユイの暴走を止める人がいなくて困る。

来たくないが帰りたくもない――そんなスネイプの複雑な心境に、今のドラコの心境は似ていた。


(父上もいいかげんスネイプ教授をからかうのをやめればいいのに)


ルシウスが来るなと一言告げれば、スネイプは来れなくなる。

それなのにルシウスが何も言わないのは、ひとえにここへ来たスネイプをからかって楽しむことを覚えたからだ。


ドラコがため息をつくと、ユイが『幸せが逃げちゃうよ』と言って脇から小突いてきた。

人の気もしらないで――と、ドラコはふてくされる。



「たまには女の子らしくケーキでも焼いて過ごしたらどうなんだ」

『それって、作ってほしいってこと?』

「そういうわけじゃない」

『じゃあ作ろっと』

「え」



嫌味で言ったつもりがあっさりと快諾され、ドラコは冷や汗を流した。




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