不死鳥の騎士団

□7.新学期
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強引なルシウスにふてくされながらマルフォイ邸に帰ると、ナルシッサは夢が叶ったと手を叩いて喜んでくれた。

ドラコも最初こそ戸惑っていたが、この常識はずれな状況をドラコなりに受け入れてくれているようだった。

いまだにルシウスは何を考えているのかわからないが、ヴォルデモートの命令で動いたのではなく、本当に単独犯だったということがわかり、ユイは少し嬉しくなった。


ユイは以前夏休みに泊まった際に使った部屋ではなく、ドラコの隣の部屋をあてがわれた。

いつから準備をしていたのか、ルシウスが杖を一振りするたびに次々と家具が現われる。

ふかふかのソファ、天蓋つきのベッド、壁一面のクローゼット一杯につまった洋服……。

それらすべてが自分のために準備されたかと思うと、暖かい気持ちになると同時に、申し訳ない気持ちにすらなる。



『わあ……ありがとうございます!』

「足りないものがあれば言いなさい。小物は自分で好きなものを揃えるといい」

『いえいえ!もう十分です!』

「遠慮か?らしくないな。魔法薬の材料のときは取引が禁止されているものまで求めてきたというのに」

『あ、あれは……っ』

「ふ……では、また何かあればその都度。私は少し出てくる」

『ルシウスさん、本当にありがとうございます!』

「父上と呼んでくれて構わないのだよ」



むしろ呼んでくれ。セブルスの前で――と小声でつけ加えたルシウスは、相変わらず不機嫌極まりないスネイプと一緒に玄関ホールに向かった。


(完全に遊ぶ気満々じゃないですか……)


なんだか楽しそうなルシウスを見送り、ユイは窓際のイスに腰掛けた。

1人で過ごすにはもったいないほど立派な部屋はなんだか落ち着かない。

カバンから自分の荷物を出し、本や魔法薬を並べてようやく一息ついた。



「劇薬はないんだろうな?」



ノックをして入ってきたドラコは、棚に並べられた様々な瓶を見て眉をしかめた。

どうやって持ち込んだのかを聞かないあたり、もう体積を無視したカバンのことは気にしないことにしたらしい。

女の子らしからぬ部屋をぐるりと見渡し、「ここで調合するなよ」とため息混じりに言った。



「マルフォイ家の養子になるからには、ちゃんとした素行をとれよ」

『私はいつだってちゃんとしてるわ』

「どこがだ。ユイは考え方が甘い。いいか?まずは純血を尊び――」



ドラコはユイの横に来てマルフォイ家とは何たるかを語り始めた。

純血から始まる辺りさすがというか、自分が何に属しているかというのを人一倍気にするドラコらしい発言だ。

自分の祖先を敬い、家系を――家族を――大切にする姿勢は尊敬に値する。


(他人を貶さなきゃ、だけど)


「――で、代々――常に尊敬される立場に――」


(そういえば、養子に入ったらブラック家の家系図にも加わるのかな)


「その点父上は――って聞いてるのか?」

『え、ええ。ドラコが一族に誇りを持っていて、ルシウスさんのことを尊敬してるってのがよくわかったわ』

「僕がユイの教育係になってやるから、ありがたく思えよ」

『なにその上から目線』

「マルフォイ家としては僕のほうが先輩だからな」



ドラコは鼻をならし、ふんぞり返ってソファに足を組んで座った。

それは行儀が悪いんじゃないかと指摘すると「ユイの前ではいいんだ」と返ってくる。

すっかり兄気取りのドラコを見て、つい顔がほころぶ。

そんなユイに、ドラコは面白くなさそうな顔をした。
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