炎のゴブレット

□10日目
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ひとしきり泣いて、ユイが校長室を出る頃には外はすっかり暗くなっていた。


(雨に打たれたい気分だったのにな……)


ユイは雨が上がり、水溜りに写った夜空を見ながら校庭を歩いた。

足を踏み入れることで月が形を変えるのにあわせて、再びユイの視界全体も歪んだ。


ユイは、校長室を出る前にダンブルドアに記憶を渡してきた。

1日待たずにその場で渡したのは、時間が経つにつれ辛くなるだけだと思ったからだ。

受け入れることはそう簡単なことではないが、事実を認めなければ先へは進めない。

どうすることもできないことをいつまでも引きずっていないで、これからできることに全力を尽くさなければいけない。

そう思っての決断だったが、やはり辛い。


(戻らなきゃ)


パシャパシャと新しい月の影を求めてあてもなく水溜りを渡り歩き、城を一周した後でクィディッチ競技場へ向かう。

こちらに来た原因がわからないので、どうすれば戻れるのかもわからない。

ただ、“お約束”的には来た場所が元の場所へ戻る扉になっているはずだ。


(墓場に戻されても困るけど……)


ユイは芝生に寝転がった。

空にはあの時と同じように星が瞬いている。

このまま寝て、朝日とともに起きれば未来にいける気がする。

そんな根拠のない考えのもとゆっくり目を閉じると、足音が近づいてきて引っ張り起こされた。



「何してるんだこんなところでッ」

『わっ!え?スネイプ先輩!?』

「雨上がりの芝生に寝転がるな馬鹿」



びしょびしょのローブと髪の毛を見ながら眉間に皺をよせ、スネイプがユイを立たせた。

無言で背を向けてホグワーツの方へ歩き出したスネイプは、数歩進んでユイのほうを振り返る。

ついて来いということなのだろうが、ユイはその場から動かずに首を振った。


「……戻るぞ」


眉間の皺を深めたスネイプが、次は声に出して言う。

それにもユイは静かに首を横に振って答えると、スネイプは舌打ちをして戻ってきて、ローブから杖を取り出した。



***
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