炎のゴブレット
□2日目
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過去を変えることがどんなに危険なことかは分かっている。
だが、ここに来たことには何か意味があるはずだ。
本当にただの偶然だったとしたら、それこそ神様がくれたチャンスだ。
行動を起こさない手はない。
次の日の昼食後、知らない人の後にくっついて入ったスリザリンの談話室で、ユイは羊皮紙にメモを取りながらこの時代でどう過ごそうか考えた。
・穢れた血って言わせない
・悪戯仕掛人を懲らしめる
・ピーターに破れぬ誓いを結ばせる
(あ、でも杖……)
杖がない状況でやれることは限られている。
さすがにピーターを毒殺する勇気はないので、やるとしたらやはりダンブルドアに告げるくらいだろう。
となると、ダンブルドアが戻ってくるまではわりと自由な時間が持てる。
(あ、遊んでいいのかな……)
深刻な事態に陥っているということは分かっているが、スネイプを見てからどうしても絡みに行きたくてうずうずして仕方がない。
・子セブかわいい
・子セブかっこいい
・子セブストーカーしたい
・子セブの好みを探る→未来で生かす
・子セブと友達になりたい
「子セブってなんだ?」
『そりゃもちろん子どもの――って、うわぁぁああスネイプ先せ――ん先輩!』
「……言いにくいなら、わざわざ“先輩”ってつけなくてもいい」
『いや、言いにくいからじゃないですびっくりしただけです大丈夫です!』
どうせ“先輩”だなんて思っていないだろとでも言いたげな顔で、スネイプが横から覗き込んでいて、ユイは慌てて羊皮紙を丸めて暖炉に投げ込んだ。
『みみみ、見ました!?』
「いや、チラッと目に入っただけだから他は見てないが……見られてはまずいものだったのか?」
『いいえとんでもない!』
「……なら別に捨てなくても良かっただろう」
『つ、つい勢いで……それで、スネイプ先輩はどうしたんですか?』
「忘れ物だ」
疑うような目を向けながらも、スネイプはユイに1冊の本を投げてよこした。
昼食のときに大広間に持っていき、そのまま置いてきてしまっていたらしい。
『よく私のだってわかりましたね』
「本を読みながら食べる行儀が悪いやつが他にいなかっただけだ」
『あ……そうですね……』
「……」
『……なんでしょう?』
本を渡してからも動かないスネイプにユイが首をかしげながら問いかけると、スネイプは「理解できるのか?」と聞いてきた。
一瞬なんのことだろうと思ったが、スネイプの視線から、本の内容のことだとわかった。
ユイが読んでいた本は、幸運の液体などの上級魔法薬が載っている本だ。
普通、学生が借りて読むような本ではない。
さすがに作れますと言うのははばかられ、『一応……』とお茶を濁す。
スネイプは少し驚いた顔をした後、渡したばかりの本を取り上げ、中をめくりながら隣に座ってきた。