炎のゴブレット
□26.真実薬
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ただでさえ姿現しは負担がかかるというのに、満身創痍の状態で2人一緒に姿くらましをするのには限界があった。
内臓がよじれるような感覚が全身を襲う。
地面に放り出されてから、ハリーはすぐには動けなかった。
今、自分がどういう状態にあるのかさえ理解できない。
徐々に感覚が戻ってくるにつれ、ホグワーツに戻ってきたんだとようやく実感した。
仰向けに寝転がり、視線を動かし、ここがクィディッチ競技場に作られた特設ステージの真ん中だということがわかった。
迷路の入り口――ハリー達が出発した場所だ。
見上げる空には星が瞬き、時間の経過を告げている。
(助かった……)
そう思った瞬間、突然音の洪水に襲われ、頭が混乱した。
四方八方から声がする。
足音が、叫び声がする。
「ユイ、大丈夫?」
隣でうつぶせに倒れているユイに声をかける。
ユイも、今の姿現しは相当堪えただろう。
ハリーは手を伸ばして、ユイの肩を叩いた。
「ユイ?」
反応がない。
胸騒ぎがしてハリーは身を起こした。
とたんにクラッと眩暈がして吐きそうになったが、構わず激しく肩を揺すった。
「起きてユイ。戻ってきたよ!」
ハリーはユイの体の向きを変え、顔が見えるようにした。
かろうじて息はしているようだが、血の気はなく、ぐったりとしている。
「ハリー!ユイ!」
スタンドから人が降りてくるのが見え、ハリーはとっさにユイの手首をつかんだ。
見せてはいけない――そう、直感した。
最初に駆けつけたのはダンブルドアだった。
続いてシリウス、スネイプ、ムーディ……あとはよく分からなかった。
そんなことよりも、今はユイの方が先決だ。
ハリーがユイに向かって駆けた時、確かに後方でヴォルデモートの声が――死の呪文を唱える声がした。
こちらへ飛ぶ直前に、呪文がユイをかすった可能性がないとは言い切れない。
「ハリー!大丈夫か!?ひどい怪我だ。くそっ、誰にやられた!?」
「やつが――戻ってきた!ヴォルデモートが!おじさんどうしよう!ユイが起きないよ!」
「なに!?」
「大丈夫じゃ、ハリー。心配はない。マダム・ポンフリーのところへ行き治療を受けるのがよかろう」
「どけポッター。我輩が連れて行く」
「ダメだ!」
ハリーはますますしっかりとユイの手首をつかみ、ユイを抱えようとしたスネイプの手を空いた手で払う。
「ダメだ?何を言っているか自分でわかっているのかね?マダム・ポンフリーのところへと校長がおっしゃったであろう。手を離したまえ、ポッター」
「……」
「手を、離せ、ポッター」
「嫌だ!」
スネイプが低い声で一言ずつ言葉を区切り脅しをかけたが、それでもハリーは頑なに拒んだ。
傷跡がズキズキして、今にも吐きそうだった。
目の前がぼんやりしてきたが、全神経を手に集中させる。
そんなハリーの様子を見て、スネイプは舌打ちをして無理やりユイを抱えた。