炎のゴブレット
□24.骨肉そして血
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薄暗闇の中で3人は身を起こした。
迷路の延長線上を思わせるような、薄気味悪い空と霧が辺りを覆っている。
右手にイチイの大木があり、その向こうに小さな協会の黒い輪郭が見えた。
左手には丘がそびえ、その斜面に堂々とした古い館が建っている。
『来ちゃった……』
「ここはどこだ?」
『……リトル・ハングルトン』
「知っているの?これは課題の続き?」
『違うわ。今すぐ戻らなきゃ!』
様子を伺うためにハリーとセドリックはあたりを見回し続けている。
セドリックは優勝杯がポートキーになっていたことに気づき笑顔を見せたが、ハリーは違った。
夢で見た場所だと気づき、ユイ同様、この場に留まるのは良くないことだと本能的に悟る。
『セドリック、優勝杯を!』
今のところ、ユイがあらかじめ考えてきたシナリオのうち、最悪のストーリーをたどっている。
頭をフル回転させ、最悪の結果を避けるために用意してきたいくつかの作戦を引っ張り出す。
一緒に墓場へ飛んでしまったら――
戻る前にピーターが出てきてしまったら――
ヴォルデモートが復活してしまったら――
『早く戻って!』
「セドリック、ユイの言う通りだ。ポートキーに戻って!」
「どうかしたのか?」
墓石の名前を読み上げたハリーが焦った声を出し、セドリックが振り返る。
ギギ……という戸が軋む音に目を向けると、腕に包みを抱えたピーターが部屋から出てくるところだった。
「うあ゛!」
突如ハリーが額を押さえて苦しみだし、大鍋の底に火がついた。
「ハリー!どうした!?」
『「早く優勝杯を!」』
ユイとハリーが同時に叫ぶ。
人影にセドリックが杖を向けているのを見て、ユイは自分が杖を持っていないことに気づいて慌てた。
杖がない、という状況は考えていなかった。
この状況で、弓矢と魔法薬だけで切り抜けられるだろうか――。
手持ちの薬品を確認するためにカバンをあさり、ユイは真っ白な杖が入っていることに気づいた。
(でもこれじゃ……ううん、迷ってる暇はないわ!)
「誰だ!何しに来た!?」
「余計な者は殺せ」
「『アバダ・ケダブラ!』」
「よせ!」
「うわぁぁぁっ!」
いくつもの声が交錯し、緑色の閃光が2方向から走り、セドリックの目の前で弾けた。
魔法がぶつかり合った衝撃でセドリックは弾き飛ばされ、草の上に転がる。
傷跡の痛みに耐えながら、ハリーはユイを見た。
白い杖を握り、ハリーの脇を通り過ぎるユイは、左手で胸の辺りを押さえ、右手の杖をセドリックに向けていた。