炎のゴブレット
□13.ハンガリー・ホーンテール
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シリウスが来てからというもの、ハリーのホグワーツ生活は一転して楽しいものとなった。
ハリーへ向けられる視線は変わりなかったが、毎日ハグリッドの小屋に行けばハリーの最大にして最強の味方がいてくれる。
しかも、シリウスは親友の大切さをハリーに説き、ハリーとロンの仲を取り持ってくれた。
そのおかげで、今はこうして毎日2人でハグリッドの小屋に遊びに来られるようになった。
ただ、1つだけ問題があった。
シリウスはハグリッドの助手としてホグワーツに雇われたのに、その仕事を放り出してユイに会いに行くのだ。
シリウスがいないからといって尻尾爆発スクリュートがいなくなるわけではなく、シリウスに会いに来たハリーとロンが代わってこの危険な生物の相手をしなくてはならなくなることが3日に1度はあった。
「ねぇハリー、そろそろ僕らダンブルドアから給料もらってもいいよね?」
「そうだね。それからシリウスおじさんに慰謝料を請求してもいい頃だと思う」
ハリーはあやうく毒針で刺されそうになった右腕をさすりながらため息をついた。
「シリウスがユイをハリーみたいに心配するのはわかるんだけどさ、魔法薬学の授業の前日に会いに行くのはやめてほしいよな」
「うん。このままじゃグリフィンドールの点数がなくなっちゃうよ」
「授業中に生徒にあたるなんて、あの最低野郎、本当にムカつく!」
「スネイプはもともと最低なやつだよ」
ハリーを目の仇にし、隙あらばいびり倒そうとしていたスネイプだが、今やハリーやネビルに限らず、グリフィンドール生全員がターゲットになっていた。
今までなら、スネイプがハリーに何かを言おうとするたびにユイがタイミングよく質問をしてスネイプの注意を逸らしてくれていたため、1回の授業で10点も20点も引かれることは稀だった。
だが、最近――特にシリウスが仕事を放り出した次の日――は、だれかれ構わず粗探しをして減点するものだから、ユイでもスネイプを止めることはできなかった。
3回目くらいの授業で、ユイから直接『ごめんハリー、無理!』というメモが回ってくるくらいだ。
「おう、おまえさんたち、もうその辺でえぇぞ。茶にしよう」
ハグリッドから声がかかり、ハリーとロンはわれ先にと尻尾爆発スクリュートから逃げた。
差し出されたビーフシチューを食べながら、2人でハグリッドに不満をぶつける。
「ハグリッドの助手でしょ?なんとかしてよ」
「そうだよ。僕らシリウスが彼女を作るための助手じゃないんだ」
「あぁ、お前さんたちの言うとおりだな。あいつは昔から女の尻ばっかり追い掛け回していたしょうもないやつで……おっと、俺がハリーにこんなことを言ったってのは内緒だぞ」
ハグリッドはバツの悪そうな顔をして、話題を変えるためにハリーに真夜中に1人で小屋に来るように言った。
「今晩だ。親父さんのマントを着てな」
「どうして?」
「見せたいものがあるんだ」
それからすぐにシリウスが戻ってきたため、ハリーはハグリッドがなにを見せようとしているのかまで聞くことができなかった。
シリウスがいるところでは言えないような“何か”がある――。
そう思うと、ハリーは夜中に透明マントで抜け出すことに抵抗を感じた。
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