炎のゴブレット
□11.杖調べ
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次の日になると雨はやんだが、代わりに学校中の視線がハリーとユイに降り注ぐようになった。
あまり好意的とは思えない視線も多々混じっている。
スリザリンの生徒はユイを英雄扱いする一方でハリーが邪魔だとけなし、レイブンクローの生徒は自分達の寮からだけ代表選手が選ばれなかったことで妬みの視線を2人に向けた。
ハッフルパフは言わずもがな。
めったに脚光を浴びることがない自分達の栄誉ある代表の座を、ハリーとユイに横取りされたと思っているのは明らかだった。
グリフィンドールにもスリザリンにも、全員に対してはっきり冷たい態度をとっている。
唯一セドリックだけが友好的な態度を崩さなかったが、それもどこか社交的な表面だけのように感じられた。
ボーバトンとダームストラングに至っては、ホグワーツ全体を恨んでいるような態度をとっていた。
覚悟をしていたとはいえ、ついこの前まで年齢線を越えたユイに拍手を送っていた生徒達にまで冷たい視線を向けられると少し寂しい気持ちにもなる。
ユイがゴブレットに名前を入れるのを見ていた生徒が多かったこともあり、ユイへの風当たりはハリーよりも強かった。
「ねえユイ、ちょっといいかしら」
代表決定から1週間が経った頃、ユイにハーマイオニーが声をかけた。
ハリーを誘って昼食でもどうか、ということだった。
『私も一緒でいいの?』
「ユイも一緒のほうがハリーも気が楽だと思うわ。ハリーを呼んでくるから玄関ホールで待ってて。湖にでも行きましょ」
ユイが玄関ホールで待っていると、沈んだ表情のハリーがやってきた。
「私、昼食をもらってくるわね」
『一緒にいくわ』
「いいのよ。大広間に入ったらそれだけで目立つでしょ?」
ユイは手伝うといったが、ハーマイオニーは1人で十分だといって大広間へ走っていった。
玄関ホールもそれなりに人の目があったため、ハリーとユイは外でハーマイオニーを待つことにした。
「ユイ、よく落ち着いていられるね。僕より大変そうなのに……」
『決まっちゃったことは仕方のないことだし、スリザリンのみんなが優しいから大丈夫よ』
「あいつらが……ううん、なんでもない。――ねえ、僕らの名前をゴブレットに入れたやつは、何を考えているんだと思う?」
『私達2人がセットっていうことを考えれば、答えは1つしかないと思うわ』
「やっぱりやつが?」
ヴォルデモート、とハリーは呟いた。
ハリーとユイが一緒に注目されるのはこれが初めてではない。
2年前、秘密の部屋を開けたのは誰だという話しになった時も、ハリーとユイが矢面に立った。
そしてその年の夏、2人はトム・リドルに会った。
他の学生には知られていないが、ハリーはユイがリドルに異常に執着されていたことを知っている。
さらに言えば、1年生のときもハリーは賢者の石が隠された場所でユイと出くわしている。
『ヴォルデモートが直接名前を入れに来れるはずないから、誰かあの人の手先が入れたんでしょうね』
「ユイは怖くないの?」
『怖いわ。何が起こっているのか把握できていないもの。でも、選手だからこそできることもあると思うの』
ハリーはどういうことだろうと不思議に思ったが、尋ねる前にハーマイオニーが小さなバスケットを抱えて戻ってきた。