アズカバンの囚人
□3-20.5 裁判の行方
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「なにニヤニヤしているのよ気持ち悪い」
朝一でフクロウ小屋に行ってきたユイは、寮に戻ってくるなりルームメイトの辛辣な言葉に迎えられた。
パンジーはチラッとユイを見ただけですぐに鏡台へ向かう。
『おはようパンジー。第一声がそれってひどくない?』
「事実を言ったまでよ」
『ひどいなぁ……ニヤニヤなんてしてないわ。でも、ありがとう』
「ありがとう?相変わらず変な子ね」
興味なさそうに鏡を見ながら髪の毛を梳かしているパンジーの元に、ユイは『ふふふっ』と笑いながら擦り寄った。
パンジーの横に映るユイの顔にはまだうっすらと隈があった。
それでもパンジーが“ニヤニヤしている”と言ったということは、ユイの些細な変化に気づいたからに他ならない。
言葉では酷いことを言いつつ、気にかけてくれていたパンジーのことを考えると、今度こそ本当にユイはニヤニヤした。
2人で大広間に向かいながら、ユイが昨日の夜の出来事をパンジーに話す。
パンジーはユイが運悪くリーマスに見つかり、減点をされたことに対して「大事な寮の得点を!」と怒った。
寮を抜け出したことや、立ち入り禁止の展望台に行ったことに関しては何も言わなかったのに、減点は許せないらしい。
「やるなら完全犯罪にしなさいよ」とは、なんともスリザリンらしいお咎めだ。
「何もめてるんだ?」
『あ、ドラコおはよう』
「ドラコ聞いてよ。ユイったらひどいのよ」
クラッブとゴイルを従えてやってきたドラコを見るなり、パンジーは飛んでいってドラコの腕に絡みついた。
隣にいたゴイルが押しやられてよろけている。
(ゴイルを押しのけるなんて、パンジー……あなたどれだけ馬鹿力なのよ……)
とても本人の前では言えないようなことを思いながら、ユイは2人のために席をあけた。