アズカバンの囚人
□3-16 [IF]ブラッククリスマス
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クリスマス休暇が始まり、ホグワーツからいっきに人が消えた。
ユイの勘違いでなければ、秘密の部屋事件のときよりも残っている人が少ない。
それほどまでにディメンターの影響が大きいのだろう。
(確かにディメンターと一緒じゃクリスマスも楽しめないわよね)
クリスマスの前日、朝早くベッドを抜け出したユイは、誰もいない談話室を抜け森を目指した。
『パッドフットー』
静かな森の中にユイの声が広がる。
返事はない。
『おーい、シリパットやーい。御飯だから出ておいで〜』
ユイは箒に乗って旋回しながら捜してみたが、足跡すら見つからない。
遠くからドサッと木の枝から雪が落ちる音が聞こえる。
もしかしたらと音が聞こえた場所へ降りてみるも、人の気配はなかった。
『シリウス・ブラック出ておいで〜出ないと目玉をほじくるぞー』
「ずいぶんと物騒な物言いですな」
『うひゃぁ!』
誰もいないことをいいことに歌って遊んでいると、突然上空から声がかかった。
『すすすスネイプ教授!い、いつからそこに!』
「目玉をなんとかというあたりからだ」
(危なっ!)
もう少し早くスネイプが到着していたら、今頃ユイは尋問されていただろう。
ユイは調子に乗って替え歌にのせてシリウスの名前を口に出したことを反省し、もう二度と呼ばないと心の中で誓った。
『教授が箒で飛んでるなんて珍しいですね。どうしたんですか?』
「ここで何をしていた?」
スネイプはユイの質問には答えず、箒から降りるとザクザクと音を立てながら大股で近づいてくる。
「焦っているところを見ると、何か良からぬことを企んでいたのであろう」
『いえいえ。ちょっと気分転換をと思っただけです!』
「わざわざ森に来なくてはいけないような気分転換が必要なほど根を詰めて何をやっているのか教えて頂きたいものですな。もっとも、ここに来た目的が他の事なのであれば話は別だが――おい」
『え?うわっ――っぶ!』
スネイプと距離をとるように後ずさりしていたユイは、木の根っこに躓き背中からひっくり返った。
しりもちをついた拍子に木の幹がゆれ、上から盛大に雪が落ちてくる。
雪だるま状態になったユイは、恥ずかしさやらなにやらで動けなくなった。