秘密の部屋

□2-12 控室に来たルシウス
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次の日、新品のローブと箒でフィールドに向かうドラコを送り出すためにユイはスリザリンの控え室に行った。

昨日ドラコが言いかけていたことを聞くのも目的の1つだったが、控え室に入るなり選手達に囲まれこれは無理だなと早々に諦めた。

ユイの登場に、男くさい控え室内は沸いた。



「ユイ、わざわざ応援に来てくれたのか?」

『ええ、まあそんなところよ。頑張ってね、グリフィンドールなんかけちょんけちょんよ!』

「ああ……」

『ドラコ、そう緊張しないで。大丈夫よ、思いっきり楽しんでくるといいわ』

「緊張?僕が?グリフィンドール相手に?」



あるわけないだろとドラコは鼻で笑った。

ユイが『油断してると足元すくわれるわよ』と笑顔でドラコの肩を叩いていると、
「ずいぶんと賑やかだな」という落ち着いた声と共にルシウス・マルフォイが控え室にやってきた。



「マルフォイさん!」

『ルシウスぅ!?』



(なんでここに?え、まさかこれ映画版――?)



「この度はすばらしい贈り物をありがとうございました」

「たいしたことではない……それよりも」



フリントの目配せでスリザリンの選手たちが一斉にお礼を言うが、ルシウスはそちらに目もくれずにユイに近づいた。



「はて、君も選手だったか?」

『いえ、ドラコの応援です。ルシウスさんもこれから観戦ですか?』



ユイはルシウスの傍らに立つ、シーツの裾をつかみビクビクしているドビー見た。

ハリーがロックハートに骨抜きにされるのを阻止するために、ドビーを止めなくてはいけない。

ユイは『よければご一緒してもいいでしょうか』と遠慮がちにルシウスに尋ねた。



「私がレディの誘いを断るとでも?」



ルシウスは微笑んでユイの手をとり控え室を出た。









ルシウスに手をひかれながら、ユイはこの人こんなキャラだったっけ?と首をかしげた。



『あ、あの、ルシウスさん?』

「先ほどのようにルシウスとは呼んでくれないのかな?」

『あ、すみません。先ほどのはつい勢いで』

「気にしなくてもいい。積極的な女性は嫌いではないよ。……セブルスに飽きたらいつでも私のところにくるといい」

『はい!?』

「私でよければ、いつでもお相手しよう。なんなら今からでも構わないよ」

『……あの、さっきから口説いているように聞こえて恥ずかしいので止めてください』

「私は口説いているつもりだ」

『え、』



驚きのあまり硬直するユイを見てルシウスは喉の奥で笑うと「冗談だ」と言って手を離した。


(ルシウスが言うと冗談に聞こえない――ていうか、ドビーいなくなってるし!!)


ルシウスに気を取られている隙に、いつの間にかドビーの姿は消えていた。

ブラッジャーに呪いを掛けに行ってしまったのだろう。


(あぁぁ、なんてこと!)


こうなったらルシウスの戯れに付き合ってる暇はない。

『そういえば生徒は教員席に入れないんでした!』と適当なことを言い、ユイは寮生がいる低い観客席に走って戻った。


ゆれる黒髪を見送りながら、ルシウスは不敵な笑みを浮かべた。




→あとがき
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