秘密の部屋

□12.狂ったブラッジャー
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計画を実行に移すべく、次の闇の魔術に対する防衛術のクラスでロンはユイに近づいた。

最初の授業でロックハートに絡まれて以来、一番後ろの窓際の席がユイの指定席だった。

とばっちりを恐れて、他の生徒もこの授業だけはユイに寄りつかない。



「ここあいてる?」

『ええ、どうぞ。って、あら、ロンじゃない。久しぶり』

「久しぶりユイ!……ぅげ」



声をかけてから、ロンはやっぱり無理かもしれないと急に弱気になった。

前の列に、プラチナブロンドの頭が見えたのだ。

振り返った青白い顔は、紛れもなくドラコ・マルフォイ――これからロンが探りを入れようとしている張本人だった。



「何しに来たんだウィーズリー?今度は蛇を吐き出すところでも見せてくれるのか?」

「黙れマルフォイ」



ロン達3人がこの授業を選んだのにはわけがある。

1つは、ロックハートにサインをもらう準備も同時に進めていたからだが、もう1つは常に誰かしらが周りにいるユイが1人になるのがこのクラスのときくらいだからだ。

だから、ロンはこのチャンスを逃すわけにはいかなかった。

たとえ目の前の席にドラコ・マルフォイが座っていようとも、だ。



「前を向いてろよマルフォイ。僕は1秒たりともお前の顔なんて見ていたくない」

「それはこっちのセリフだウィーズリー。グリフィンドールは向こうに行け」

「お前の指図は受けない!」

『2人とも落ち着いて。いいじゃない、席は自由のはずよ。ほらロンも騒いでないで早く座って。先生来ちゃうわ――って来ちゃったじゃない!』



自分を巻き込んだ作戦を立てられているとは思ってもいないユイは、ロックハートがさわやかに教室に入ってくる姿を見て、あわててクラッブとゴイルの影に身を隠した。



「何を騒いでいるのです?ははぁ、なるほど。1番後ろの席――すなわち私から遠い場所が嫌なんだね」



入ってくるなり勘違い発言をするロックハートの視線からユイは間一髪で外れた。



「ハリー、ハリー、ハリー……それほど私の授業に興味があるのであれば――私の授業の手伝いという名誉ある仕事を与えましょう。授業を見るだけではなく……実際に体験できるわけだ。こんな名誉なことはない。そうでしょう、ハリー?」



騒いでいたのはロンとドラコなのに、ロックハートは後方の集団にいたハリーを目ざとく見つけて指名した。

前に呼び出し、教卓の脇に立たせ、狼男の役をやるよう命じるのを、ユイは少しだけ机から顔をのぞかせて見た。


(ハリーも災難ね……)


大きく狼の鳴きまねをしたあと、ロックハートに飛びかかられるハリーには心の底から同情する。


(あれって職権乱用なんじゃないの?)


「そう、そう――そしてですね、信じられないかもしれないが、私は飛び掛った――」


(うわ、痛そう)



「こんなふうに――相手を床に叩きつけた――」



床に叩きつけられるハリーを見て、ドラコがニヤつく。

ドラコはロックハート自体は気に入らないようだが、闇の魔術に対する防衛術の授業は楽しみにしているようだった。

最近の授業でハリーが鼻かぜをひいた雪男や田舎っぺなど情けない役ばかりをやらされ惨めな姿を晒されているからだ。

わざとロックハートを持ち上げるようなことを言ってはハリー相手に実演させるよう仕向けることもあった。
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