番外編
□[後日談/IF]ドラコ・マルフォイの恋愛相談室2
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※矛盾・キャラ崩壊有
***
『ドラコ、折り入って相談が……』
「嫌だ。他を当たれ」
『うぇぇ!?内容くらい聞いてよ!』
「聞かなくても想像がつく!」
ユイが深刻そうな顔で、そして少し言いにくそうにドラコに相談を持ちかけてくるのはこれが初めてではない。
半年くらい前からユイはこうして月に1回くらいの割合でマルフォイ邸に戻ってきている。
相談の内容は決まってスネイプのことだ。
しかも恋愛がらみの。
毎回毎回、ドラコの体力と精神力をこれでもかと奪っていく。
「何回目だと思ってるんだ。僕を当てにするなって言っただろう」
付き合っている感じがほしいというくだらない悩みを親身になって聞いてやったのが運のつき。
ホウレンソウがどうとか言って逐一経過を伝えてくるわ、次々新しい悩みを持ってくるわで、ドラコはホグワーツに行っていないにも関わらず2人の学校生活に詳しくなってしまった。
「妹と寮監の恋模様を詳細に報告される僕の身にもなってみろ」
『だってドラコしか頼れる人がいないんだもん!』
「“だって”じゃない!子供じゃないんだ。自分たちでなんとかしろ」
2人は成人の男女、しかも片や40越え。
ドラコはその半分にも満たず、少し前まで彼の教え子として学校生活を送ってきた。
ユイだって見た目はドラコよりずっと上だし、学生時代から大人びているとみんなに一目置かれる存在だった。
なぜ今さらドラコが恋愛のいろはを教えてやらねばならないのか甚だ疑問だ。
(嫌がらせじゃないだろうな)
“恋人らしいこと”の次は“エスコートとスキンシップの違い”だっただろうか。
“肩や腰に手を回されたときの対応の仕方”だの“手をつなぐタイミング”についても相談された。
いつの間にか話はスネイプの手の魅力についてになっていて、『繋ぐより見てたいわよね』と意味不明な持論に無理やり同意させられたのは記憶に新しい。
(確かあの日は一方的に専属アドバイザーに任命されたんだよな……)
冗談じゃない。
そう返した筈なのに、気づけばまた話を聞いている。
ドラコ・マルフォイはそういう男だった。
*
「……お前、よくそれを僕に相談しようと思ったな」
話を聞いてすぐにドラコは後悔した。
今すぐに忘却術をかけてほしい。
ユイが言ってきたのは、“キスされたらどうするのが正解か”ということだった。
「他にいくらでも適した相談相手がいただろう」
『そんなことないわ。リーマスに言ったら絶対にからかわれるし、ルシウスさんやシリウスに相談したら練習台になってやるって言われるだろうし――』
「父上をそこに並べるな」
悲しいかな、父上がそんなこと言うわけがないだろうと反論することはできなかった。
ドラコが尊敬していた知的で紳士的なルシウス・マルフォイにはいろいろと前科があった。
「だいたいどうして男ばっかりなんだ」
『男性側の意見が聞きたいからよ』
「だからってなあ……」
『こっちの人って唇くっつけるだけじゃなくて、なんていうか、こう――情熱的なものを平気でするじゃない?』
「話を進めるな手で表現するな!」
ドラコはやめろと叫んで手を払った。
両手の平を合わせたかと思ったら、傾けたり指を曲げたりし始め……
想像してしまったじゃないか。
あの人がユイの顎を持ち上げて唇を吸い、深く舌を差し入れて咥内を侵す様子を。
『でも私は唇が重なるだけでいっぱいいっぱいで息もできなくて、すぐに苦しくなって押し返しちゃうでしょう?その度に教授が残念そうにするからすごく申し訳ないなって……』
「僕の意向を汲む気はないのか」
頼むからやめてくれと心底思った。
そんなに深いキスをしているわけじゃないんだなとほっとしている場合ではない。
脳が勝手に映像を作り出すのもつらいが、ユイの口からそういう話を聞くこと自体がつらかった。