番外編

□[後日談/IF]ドラコ・マルフォイの恋愛相談室2
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ユイは昔から恥ずかしいことを平気で言ったりやったりするところがあった。

マルフォイ家の養子になったからには言動を考えろと苦言を呈したのも1度や2度ではない。

しかしこんな――他人とのキスをおおっぴらに語るような破廉恥なやつではなかったはずだ。


(誰だユイをこんなにしたのは)


1人しかいない該当者を恨み、同時に2人の交際を認めた過去の自分を責めた。



「何度も言うようだが、僕とあの人は年も性格も全然違うんだ。僕じゃなくてスネイプ先生本人に相談しろ」

『無理無理無理!恥ずかしすぎて死んじゃう!』

「その恥を僕に対しても持ってくれ」



なぜ自分がユイの相談役に抜擢されてしまったのか。

考えても考えても納得がいかない。

普通こういう話は家族が1番聞かれたくないものなのではないだろうか。

ドラコだって、ユイがスネイプのキスに翻弄されている情報なんて世界一いらないものだ。



「だいたい女性側の事情なんて僕にわかるわけがないだろう。女性に聞いてこい」

『聞いたわ』

「なんて言われたんだ」

『パンジーは“相手に任せておけばいいのよ”って』

「正解だろ」

『トンクスは“ユイのしたいようにすればいいじゃない”って』

「それもアリだな」

『ジニーは“舌を噛み切ってやりなさい”って』

「……」

『ハーマイオニーは“お願いだから2度と私にその手の話を振らないで”って』

「認めたくないがグレンジャーの意見が1番僕の感覚に近いな」

『ちなみにドラコは教授はどういうキスが好きだと思う?』

「今の僕の言葉を聞いていたか?」



もうため息すら出てこない。

どうしたものかと天を仰ぎ、思いついた方法はあまり良い方法とは思えなかった。


しかし背に腹は変えられない。

ドラコは覚悟を決めて自分の身を切った。



「わかった。男がどういうキスに弱いか教えてやるから聞いたら帰れ」

『おおっ!』

「ただしあくまでこれは僕の理想だ。スネイプ先生に当てはめてみて、違和感がなければそのままやれ」

『うんうん』

「まず男のほうがギュッと抱き寄せるだろう?手を後頭部に添えられたら相手の肩に腕を回すんだ。自然と顔が近づくから目を見つめて“愛してる”って――』

『わぁぁああムリムリちょっとストップ!』

「まだキスまでいってないだろう」

『いい、いい、自分でなんとかする!』



ドラコの作戦は大成功だった。

言われたとおりスネイプに当てはめて想像したらしいユイは茹蛸のようになり、バタバタと手を動かして逃げていく。

捨て台詞のように『お願いドラコはドラコのままでいて!』と叫んでいったが、ドラコからしてみれば、ユイのほうこそユイのままでいてほしいものだ。



「先が思いやられるな……」



エメラルド色の炎が消えるのを待って、音が出るほどのため息をつく。

スネイプがもっとしっかりしていれば、自分にこんな被害が及ぶことなんてなかったはずだ。

そう――相談やアドバイスを受けるべきはユイではなくスネイプのほうなのだ。


(誰かがスネイプ先生の専属アドバイザーになってやればいいのに)


気持ちを切り替えるために本を読み始めたドラコは知らない。

スネイプはスネイプで校長室の絵画にアドバイスという名のハラスメントを受けており、そのことが少なからずユイの行動にも影響を及ぼしていることを。





Fin.
→あとがき
→p4:おまけ(スネイプのキス指南)
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