番外編
□2-20.5 [IF]貴族の戯れ
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ルシウスと別れたユイは、さっそくスネイプに見つかった。
「どこに行っていた。我輩は校長室へと申し上げたはずだ」
『その帰りです』
「靴に泥がついている。ローブの裾には芝生。髪には――ほう、暴れ柳の葉か」
『すみません外に出ていましたッ』
(探偵かっ!)
頭に伸ばされた手が何もつかんでいないことも知らず、ユイは頭を下げた。
ついでにルシウスの言葉に甘え、名前を出させてもらう。
効果はてきめんだった。
スネイプの眉間のしわはみるみるうちに深まり、舌打ちまで飛び出した。
(ってそっちの効果じゃない!)
『偶然です、偶然。ここで会って、ハグリッドの小屋に案内してほしいって言われたので外に出た、んですが規則があることを思い出して断って戻ってきたんです!』
負のオーラが取り巻いてきたため、後半になるにつれて早口になった。
『せ、セーフですよね?時間』
「6時、5分前」
『ほっ』
「寮に戻るまで、何分かかるでしょうな」
『!』
スネイプの目が意地悪く光った。
残り5分。
走れば間に合う。
が、走らなければ間に合わない。
そして、廊下を走るのは規則違反だ。
『スネイプ先生が送ってくれたり……?』
「あいにく我輩はこれから“ルシウス様”に会わねばならんのでね」
『今は“様”つけてないですよ!』
「あと4分」
『うぇぇ!?』
淡々とカウントダウンをするスネイプは、玄関ホールの砂時計に目をやっている。
何点までなら順位に影響しないか見ているようで恐ろしい。
最近できたばかりの規則と、あってないような規則、どちらか片方を破らなきゃいけないなら、選ぶのは当然後者だ。
『失礼します!お気をつけていってらっしゃいませ!』
ユイは全力で階段を駆け下り、焦るあまり消える階段にはまった。
『……踏んだり蹴ったりだわ』
6時をまわって出歩いている生徒がいるはずもない。
これからここを通る可能性があるのは先生方かピーブズくらいだ。
今日は襲われる可能性がないとはいえ、たくさんの絵画に囲まれながら立ち尽くすのはかなりかっこ悪い。
『だれかー』
投げやりな救助要請が虚しく階段に響いた。
***