不死鳥の騎士団

□5-11 開心術
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「では、覚悟は良いな?」

『お手柔らかにお願いします』

「――レジリメンス!」



呪文を唱えてすぐに、スネイプの頭の中に映像が流れる。

切れ切れの映画のようなそれは、ユイの姿を鮮明に映し出していた。


最初に飛び込んできたのは、ワンピースを着た、出会って間もない頃のユイだ。

地下の廊下を走り、飛びつこうとしているユイを制するスネイプ自身の姿も映っている。


箒に跨った直後に青空を仰いで芝生に寝転がり……。

クィレルの元に反対呪文を習いに行き……。

大きな鏡を前に、小さなユイがダンブルドアにしがみついて泣いている……。



「……」

『え、ええと……』



杖先をわずかにずらすと、気まずそうな5年生のユイの姿がスネイプの目に映る。

ユイのことだから、閉心術にも長けているだろうと思っていたが、この術に関しては平均以下であるらしい。

これでは闇の帝王でなくとも、感情は筒抜けだ。

それなら――と、スネイプは一度下げた杖をすぐに構える。



「話しにならん」

『ちょっ』



ユイの抗議の声も満足に聞かないまま、再びスネイプはユイの記憶の中へと落ちる。

続きを――と意識すれば、難なく森を歩くユイの姿が浮かび上がった。


月が浮かぶ禁じられた森を、ドラコと手をつなぎながら歩いている。

校則を破ってデート、などではないことはすぐに分かった。

2人の前方にはハリーとハグリッドも一緒にいる。

そして、ユイはとても具合が悪そうだった。


(罰則か……?)


突如、暗闇から何者かが現れた。

地面を這うように進むソレに向かって、ユイが矢を放つ。

武装解除の呪文を唱え、盾を作り出し……

そこで、一度画面は暗転した。



「それで抵抗しているつもりか?」



医務室での会話は、雑音がひどく、映像も途切れ途切れになった。

しかし、スネイプの進入を追い出すほどではない。

このままでは……と、焦りが芽生える。



『さすが、容赦ないですね……』



床に膝をついたユイは、大きく肩で息をし、こめかみを押さえた。

心への進入を許すというのは、総じて良い気分ではない。

ましてや強い感情を持った記憶ともなれば、精神的な負担は増す。



「今日のところはこれくらいにしておこう」

『いえ、まだ大丈夫です!』

「体力を奪われ、集中力を欠いた状態では成功することも成功しない」

『お気遣いありがとうございます。ですが、“彼”が調子の悪いときを避けてくれるなんて思いません。大丈夫です。まだやれます!』



ユイは、ふらつきながら立ち上がった。
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