アズカバンの囚人
□3-20.5 裁判の行方
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ドラコはパンジーが腕にまとわりついているにもかかわらず、器用に食事をしている。
腕を怪我して――実際には怪我したフリだが――片手で生活していたことがこんなところで役にたっているとは驚きだ。
「ユイったら寮の点を5点も減らしたのよ!」
「減点?何をしたんだ?」
ドラコは眉がひそめてユイを見る。
『ちょっと夜の冒険をね。大丈夫よ、5点くらいすぐに取り戻すわ』
「点数の問題じゃないだろ。いい加減に――」
『わかってる。パンジーとかドラコにも心配かけちゃってたし、私、これからは無理しすぎないことにするわ!』
「べ、別に私もドラコもあんたのことなんか心配してないわよ」
『うん。ありがとう』
「だからなんでお礼言うのよ!」
パンジーは「まるで私が心配していたみたいじゃない」と拗ねてみせた。
その姿を見ながらユイが笑顔で糖蜜パイに手を伸ばすと、ドラコが「わかればいい」とユイの手を止めた。
「心配かけて悪かったと思っているんだな?」
『え、ええ。そうね』
ドラコが何が言いたいのかよくわからず、戸惑いながら手の行く先をカボチャプディングに移動させると、その手もドラコによってはたかれた。
『あ、あの……ドラコ?痛いんだけど……』
「悪かったと思うなら、これからは僕らの言うことを聞くんだな」
口の端をあげるドラコを見て、パンジーもニヤッと笑った。
(何なに?2人とも怖いよ?)
「まず、朝食に甘いものは禁止だ。クラッブ、ゴイル、ユイが食べそうになったら横取りしろ」
「「任せろマルフォイ」」
『え!?』
クラッブとゴイルは、舌なめずりをしながらテーブルにあるデザート類をかき集めた。
「その前に、毎朝ちゃんと朝食に来ることだな」
「私が連れてくるわ」
「ああ、頼む」
『ちょっとちょっと!勝手に決めないでよ!そんなところで仲良しアピールしなくてもいいって!』
ユイが1人で行動している間に、いつのまにかパンジーとドラコは仲良くなっていたようで、2人で提案を次々としてきた。
「3食必ず食べること」
「夕食後は消灯時間まで談話室にいること」
「夜は消灯時間になったら寝ること」
「ポッター達と口を利かないこと」
「グレンジャーと一緒に図書館で勉強しないこと」
「常に必ずスリザリンの誰かと一緒に行動すること」
「宿題を手伝うこと」
『ちょっ、待って!なんかいろいろと公私混同してるって!』
最後なんてどさくさにまぎれてクラッブとゴイルが提案してきた。
食事についてはいいとして、談話室にいることを強要されたり、消灯後にすぐ寝なくてはいけないとなると、いろいろと差し支える。
ユイは抗議するが、ドラコは「心配をかけた罰だ」と言って取り合わなかった。
「悪いと思ってないのか?」
『……思ってます』
「じゃあ約束しろ」
『はあ……』
これでユイはほとんどの時間をスリザリンの誰かと過ごさなくてはいけなくなった。
(シリウスの御飯どうしよう……)
余計な心配が1つ増えてしまった。
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