アズカバンの囚人
□3-20.5 裁判の行方
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小屋では、ハグリッドが大泣きしていた。
ハーマイオニーも涙ぐんでいて、ユイの姿を見るなり抱きついてきて泣き始めた。
『やだ、まさかハグリッド敗訴したの?』
(ノットめ……めずらしく饒舌だと思ってたら……思わせぶりなこと言わないでよ)
ルシウスへの手紙は間に合わなかったのだろうか。
ユイはハグリッドと一緒に裁判へ行き、証言台に立つ予定だったが、それは叶わなかった。
裁判が行われたのが金曜で授業が重なっていたことを理由に止められたのだ。
ハグリッドの話によると、ダンブルドアからお達しがあったらしいが、ユイはスネイプが何か言ったに違いないと思っていた。
「違うわ。私達勝ったのよ!バックビークもハグリッドも無罪よ!」
『それ本当!?』
「ああ、次に悪さをしたらバックビークは死刑、俺はクビっちゅう、執行猶予ってやつらしいが、とにかくバックビークは助かったんだ!」
『よかった。もう、驚かさないでよ』
「ごめんなさい。私嬉しくて」
「みんなお前さんら2人のおかげだ!」
『そんなことないわ。そもそもバックビークは何も悪いことしていないもの』
「いいや。ハーマイオニーが作ってくれたメモのおかげで委員会のやつらがバックビークがいい子だってことをうまく説明できたし、ユイが前日に書いてくれた弁護文のおかげで、襲われた側にも非があるっちゅうことが認められた」
『ルシウスはなんて?』
「裁判には出席してねぇ。用事ができたとかで、裁判をすっぽかしやがったんだ!」
ハグリッドはけしからんと怒っていたが、とても嬉しそうに見えた。
『じゃあ、バックビークは処刑されなくてすむの?』
「ああ。やつらから文句を言われることももうないだろう」
『そっか……よかった……』
ユイは安堵の息を吐き、ハーマイオニーの背中に手を回した。
(いつか、ハーマイオニーと対峙するときがくるかもしれない……)
そのまま今までの苦労が報われたことを喜び合い、バックビークが一声鳴いたのを合図に2人でハグリッドの小屋を出た。
『ハーマイオニー、協力するのはここまでよ』
「どうしたのよ急に」
ハーマイオニーは不安そうな顔でユイの手を握った。
ルシウス・マルフォイに手紙を書くと言っていたユイのことが急に心配になった。
『ハリーとロンと仲良くやるのよ』
「ユイ……?」
『私達、これから敵同士よ……なんてね』
ユイが笑って『今年の試験はわたしが勝つわ』と言った。
「なんだ。おどかさないでよ……私も負けないわ」
『ふふっ、じゃあね!お迎えが来たから行くね』
ユイに合わせてハーマイオニーが顔を丘の上に向けると、マルフォイがクラッブとゴイルの2人を従えて建物から出てくるところだった。
見るからに機嫌が悪そうな3人の元へ、ユイが走っていく。
(ユイってば、なんであんなやつらと仲良くするのよ)
ハーマイオニーのところからでは4人が何をしゃべっているのかまでは聞こえなかったが、容易に想像はできた。
バックビークの裁判が無罪に終わり、面白くないのだろう。
マルフォイがユイに何かつっかかっていっている。
手を振って3人と一緒に帰っていくユイを見ながら、ハーマイオニーはユイが遠い存在になってしまうような気がしてならなかった。
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