アズカバンの囚人
□3-16 [IF]ブラッククリスマス
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次の日、ユイは1人でクリスマスの朝を迎えたが、幸せな気分だった。
去年よりも増えたプレゼントの1つつに、暖かいメッセージが書き込まれている。
学期最後のホグズミードで買ったであろうクリスマス仕様のハニーデュークスのお菓子、カエルチョコの箱買い、手作りのクッキー――。
クリスマスのプレゼントは見事にすべて食べ物だった。
ドラコはもはやシリーズ化しつつある黒いラビットファーの手袋を送ってきていたが、ナルシッサのお手製シフォンケーキが一緒に贈られてきていた。
(そんなに私食べてないイメージあるのかな?)
どのメッセージカードにも「ちゃんと食べている?」とユイの不規則な食生活をたしなめる内容が書かれている。
『おっ』
苦笑いをしながらカードを読んでいたユイは、小ぶりの箱に添えられた1枚のカードに目をひかれた。
――姫君お気に入りの例の薬の飴バージョンを作ったのでどうぞお納めください――
メッセージカードには1文だけかかれ、真紅のリボンがかかった小さな缶には色とりどりのドロップが入っていた。
差出人の名前は書いていなくてもわかる。
フレッドとジョージだ。
『うわぁ、やられた!』
彼らのプレゼントという名の悪戯は、ユイの髪の毛を10メートルほどに伸ばした。
ラプンツェルにあやかっての悪戯だろう。
“例の薬”が去年もらった変身薬の一種――精神年齢に合わせて見た目を変える薬を指すとユイが思うと見越しての犯行。
うかれて警戒を怠った自分が情けない。
*
『というわけで、なんとか――』
「断る」
『――してください教授』
切っても切っても伸びてくるため、諦めて編んだりまとめたりしてなんとか動けるようにし、ユイはヘトヘトになりながらスネイプの私室を訪ねた。
1日で効果は切れるだろうが、頭が重くて仕方がない。
「自業自得だ」
『それはそうなんですが』
「我輩は忙しい」
『そう言わずに!』
解毒剤が欲しいなら自分で作れと言うスネイプに、バランスが悪くて作れないとユイが粘っていると、ご機嫌なダンブルドアが入ってきた。
「メリー・クリスマス!――おやユイ、珍しい髪型をしておるの」
『フレジョにやられました……』
「校長、わざわざここまで来られるとは、なんの御用ですかな?」
「せっかくのクリスマスじゃから、皆で食事をしようと思っての」
ただでさえ人が少ないのだから、わざわざバラバラに食べる必要はないだろうとダンブルドアは昼食に2人を誘った。
「それとも2人の方が良いかの?」
「いえ」
(即答!?)
うなだれたいところだが、後頭部が重いためそれも叶わない。
もはや涙目になるしかないユイを見たダンブルドアは、スネイプに解毒剤を作るよう頼んでくれた。
「そのままじゃ食べづらいじゃろう。セブルスになんとかしてもらってから来なさい。では待っておるぞ」
薬を煎じるのに時間がかかれば2人で食べられるのではないかと期待をしたユイだが、スネイプは薬を調合するまでもなくユイの髪を元通りにした。
「……フィニート」
『え!そんな簡単に!』
「薬ではなく魔法だと気づけ馬鹿ものが」
Fin.
→あとがき