賢者の石
□[番外編]1-5.ダイアゴン横丁(服屋編)
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『スネイプ先生!待って下さい!!』
まだ時間がかかりそうだったため、先に教科書でも揃えておこうかと隣の店に向かうと、勢いよく背中にタックルをされた。
「貴様……っ」
『あわわわ、ごめんなさい!』
躓いて転んだらしいユイは、鼻を押さえて涙ぐみながら『置いていかれると思って……』と俯いた。
「服はどうした。」
『ちゃんと買ってきました。すみません、調子に乗りました』
以後気をつけます、と書店のドアをくぐるユイの立ち直りの早さに驚かされる。
その後、どんなに急ごうが文句ひとつ言わずついてくる根性には少しばかり感心した。
一度だけ、ペットショップの前を通ったときに黒ネコに釘付けになり『ジジだ!』と意味不明なことを言ってはしゃいでいたが、「不要だ」といえば素直についてきた。
*
日が傾きかけるまで自分のペースで買い物をし続け、スネイプはわずかに後悔した。
『疲れたー』とベンチに座るユイを見下ろし、どうしたもんかと考える。
ここで休憩をさせたのでは自分の非を認めるようなものだが、このまま姿現しをしたのでは耐えられないだろう。
「だらしがないですな」
結局、会話をして時間をつぶすことに決める。
ちょうど聞いておきたいこともあった。
決して、気遣いでは、ない。
Fin.