番外編
□7-* 地獄の罰則
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『さて、さて、さて――』
今はもう使われていない地下の教室に、作られた低い声が響いた。
太陽光の入らない空間を松明の灯りが照らし、不気味な雰囲気を演出している。
集められたメンバーは互いに顔を見合わせ、首をかしげ、不可思議なものを見る目で前を向いた。
『廊下での魔法の使用、無許可なクラブ活動、度重なる校長への無礼な態度……諸君らの行動は退学にふさわしく、見逃せるものではない』
教壇をゆっくりと往復しているのは、かつてこの部屋の主であった人物ではない。
育ちすぎたコウモリと称するには小さすぎる、ユイ・モチヅキだ。
口調を真似ているのは明らかだが、その目的が見出せない。
『本来であれば即刻家に送り返すところだが、今は魔法省により、7年間の学習が義務付けられている。しかるに――えっと……罰を与える』
すっかり成りきっているユイの最後の言葉を聞き、ネビルはようやく自分達が集められた理由を思い出した。
いまここにいるネビル、シェーマス、ジニー、ルーナの4人は、数時間前まで8階にいた。
ダンブルドア軍団の再結成に伴い、必要の部屋を再度開けようとしていたのだ。
そのとき、タイミング悪くアミカス・カローに見つかり、逃げるためにちょっとした戦闘をしていた――はずだった。
それがなぜか、気づけばユイが相手になっていて、驚いて手を止めたところ捕まり、あれよあれよという間に1人劇場を見せられるに至った。
「罰?ははっ、冗談だろ?僕ら、ちょっと雑談していただけだよ」
まるで緊張感のない声で言うシェーマスをユイが睨んだ。
たぶん、あれも真似なのだと思う。
『勝手な発言を許した覚えはない、フィネガン』という偉そうな声が返ってきた。
「ねえ、あれって、スネイプがユイに乗り移っているの?」
コソッと耳打ちをしてきたジニーに、ネビルは「まさか」と小声で答えた。
もしあれが見た目が違うだけのスネイプ本人なら、長年いじめ抜かれてきたネビルの体はいつも通り拒否反応を起こすはずだ。
「罰則をしているフリだよ、たぶん」
そうじゃなきゃ、ユイがスネイプの真似をしている意味がわからない。
「ほら、ユイにも罰則の権限が与えられたじゃない」
「ああ」
ジニーは納得し、顔から緊張感が消えた。
アミカス兄妹につかまっていたら、今頃は磔の呪いをかけられていただろう。
きっと、それを防ぐためにユイが出てきてくれたのだ。
ネビルも、この言いようのない不気味さにさえ目を瞑れば、笑いたい気分だった。
ただ、場所のせいなのか特徴的なしゃべり方のせいなのか、どうも嫌な予感が消えない。
『諸君はまず、自分達がどれほど愚かなことをしているのかを理解しなければならない』
ユイは、スネイプがいかにすばらしい人物であり、校長としての職務にかける情熱はいかほどかと熱く語った。
そして、ダンブルドア軍団の結成は構わないが、スネイプに迷惑をかけるようなことはしないようにと念をおした。
あまりに長い演説で、ジニーとシェーマスは途中から今後の活動について話し始めていた。
ネビルも罰則の心配がないなら下級生にも積極的に声をかけられるなあとぼんやりと思った。