番外編
□7-* 地獄の罰則
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ユイの風変わりな罰則は、たちまちダンブルドア軍団のなかで噂になった。
「まさか」という怖いもの知らずがわざと捕まりにいき、ヘトヘトになって帰ってくるということが何度か繰り返される。
最初の罰則から1ヶ月が経つころには、最も恐ろしい罰則として周知され、活動にも熱が入った。
「こうなることを予想して、わざとああいう内容にしたのかしらね?」
日々腕を上げていくメンバーを見ながら、ラベンダー・ブラウンが言った。
「それはないわ」とジニーが一蹴するのに続き、ネビルも「本気だと思うよ」とげっそりしながらハンモックがたくさんかけられている休憩スペースへ向かった。
ジニーやネビルは活動に積極的な分、罰則を受ける回数も多い。
同じ内容が認められないため、次第にネタが尽きてきつくなっていくという仕様は、本当につらい。
肉体的な攻撃よりもよっぽど堪える。
もう二度と捕まるものかと誓うのだが、ユイは手ごわく、今日も校長室まであと1歩というところで捕まった。
「僕たち、スネイプの嫌味の理由をでっち上げることに関してはずいぶんと上手くなってきたよな」
ひと足先に休んでいたシェーマス達も、同じ話題で盛り上がっていた。
「昨日は一発で満足してもらえたぜ」
「ずいぶんと洗脳されたものじゃないか」
「ああ、服従の呪文をかけられている気分だな」
「いっそ呪いをかけてほしいものだよ」
苦笑いしながらハンモックによじ登り、ネビルも会話に混ざる。
「服従の呪文をかけられてスネイプの長所を吹聴してまわったほうがマシだ」
「やめろよネビル。聞かされるこっちの身にもなってみろ」
「この部屋で順番にメンバーが演説を始めるのか……それは勘弁してほしいな」
「確かにその通りだ。ごめん、今のは無しで」
スネイプを讃えながら戦闘訓練をする様子を想像し、ネビルは自分の発言を撤回した。
「スネイプ好きさえなければいい人なんだけどね」
ポケットから薬瓶を取り出し、ため息をつく。
ユイは毎回の罰則の最後に必ず薬をくれた。
医務室に行くわけにはいかないダンブルドア軍団にとって、この気遣いはとてもありがたい。
しかし、その薬を作るに至った経緯やスネイプの指導のすばらしさ語りがセットなのがいただけない。
「ユイがグリフィンドール生だったらよかったのにって何度思ったかわからないよ」
ネビルの嘆きに、複数の同意が上がった。
「もしそうだったら、本気で好きになっていたかも」
「あの熱量を自分に向けられたらって思ったら悪い気はしないよな」
「うんうん。才色兼備で優しくて一途だもん。それでいて束縛しない」
「最高かよ」
「ちょっと抜けてるところもいいよな」
「スネイプ好きさえなけりゃなあ」
「そこなんだよね」
「他の全てを帳消しにする破壊力があるよな」
一時の盛り上がりは、たった一言で鎮火した。
はあ、というため息の合唱が起こる。
「そうだ!いいこと思いついた!」
シェーマスが突然身を起こしたので、ネビルも顔を上げた。
同じように期待の眼差しをシェーマスに向ける顔がいくつか見えた。
「アモルテンシアで矢印の方向を変えればいいんだよ」
「スネイプの長所の代わりにシェーマスの長所を書くの?」
「スネイプよりはマシだろ?それに、罰則自体なくなるかもしれない」
「そっか」
「ダンブルドア軍団に入ってくれるかも」
いいこと尽くしじゃないか、名案だと拍手喝采が起こる。
しかし、それもまた一時のことだった。
そんなことは不可能だと、誰もがわかっていた。
もしそんなことをすれば、背後に控えるラスボスが出てくる。
ある意味そっちのほうが気楽かもしれないが――。
「ねえ男子たち、さっきから何の話をしてるの?」
下から聞こえてきたラベンダーの問いかけに、ネビルたちは声を揃えて答えた。
「夢物語さ」
ため息の合唱は、先ほどよりも大きくなっていた。
Fin.
→あとがき
&おまけのスネイプとヒロイン(P6)