番外編

□5-5 [IF]スニーといっしょ!
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モリー特製のビーフシチューはとてもおいしかった。

ただ1つ、大きな問題があった。

ユイの分だけ、別の意味でも“特製”だったのだ。



『これは……』



空になった器の上にスプーンを投げ出し、ユイはイスの上で青ざめた。

手は袖の中にひっこみ、余った布がだらんと垂れている。

ついでに視線が低くなり、食卓につくメンバー全員に見下ろされている。


(やられた……!)


驚く面々の中に、満面の笑みを浮かべる2つの同じ顔があった。

間違いない。

フレッドとジョージのいたずらだ。



『縮み薬!?』

「の、スペシャルバージョンだ」

「ネビルもやるじゃないか」



2人は仕込んだ薬が入った小瓶を掲げて得意気にしている。

シリウスがお礼を言われながら肩を叩かれているところを見ると、子犬となってクィディッチを観戦した話でもしたのだろう。

そこから芋づる式に情報を集め、あの薬にたどり着いたのだとしたら、やはりフレッドとジョージはただ者ではない。



「名称は――そうだな、若返り薬なんてどうだ?」

「いいね、賛成」

『商品にする気なの!?』



ユイは机に手をついて立ち上がろうとした。

が、大きすぎる服にもたつき、そのまま机にぶつかった。

試作段階だからなのかシチューとして飲んだからなのか知らないが、体は小さくなったのに服のサイズがそのままなのだ。

動きづらいったらありゃしない。



『……そういうことなら、精神年齢の鑑定薬みたいに服も一緒に縮むようにしたほうが良いと思うわ』

「おっしゃるとおり」

「アドバイス感謝いたします」



ため息をつきながら言うと、2人は恭しくお辞儀をした。



「うーん。マイナス5歳を想定したんだけど、もう少し小さく見えるな」

「だね。10歳というより8歳、いや7歳か……?」

『よくそんな微妙な違いがわかるわね』

「それよりさ、ユイはどうしてそんなに冷静なのかな」



困惑気味のリーマスが聞いた。

幼児化する魔法なんて見たことがないのだろう。

当人よりもまわりの大人たちのほうが驚きあわてているように見える。



「最初にこの薬を作ったのがユイだからだ」

『正確にはネビルよ』



ユイはシリウスの言葉を訂正しながら、だぶだぶの服をまくり、カバンをあさった。



「それは?完成品?」

「さすが仕事が早い」

『まさか。解毒剤よ』

「そう焦るなって」

「スネイプに見せてからでも遅くはない」

「なんて言うか見物だぜ」

『嫌よ怒られるわ!』



スネイプが迎えに来る前に元に戻らなければいけない。

ユイは薬瓶を手に立ち上がった。

それを止めるべく、フレッドとジョージがユイに飛び掛る。

ドン、ガシャン、バチンという騒々しい音を立てながら、もつれるようにして仲良く床に転がった。

はずだった。



「いたた……」

「ごめん――って、ユイ?」



一緒に転んだはずのユイがいない。

身を起こしたフレッドとジョージは、もう一度床にはいつくばった。

いくつかの瓶が割れて転がっていた。



「豆になった――」

「――わけではなさそうだな」

「じゃあどこに?」

「さあ?」



キョロキョロとあたりを見回すが、見当たらない。



「ええと、かくれんぼ?」

「まさか」



いくら幼くなったからといってそれはないだろうと言いながら、2人はテーブルの下や樽の裏を探し始めた。



***
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