番外編

□5-5 [IF]スニーといっしょ!
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キッチンでの騒ぎが大きくなってきた頃、別の部屋ではユイの前に1人の男が跪いていた。

服をぴったりのサイズにし、人当たりのよさそうな笑みをユイに向けている。

ユイは姿現しの影響が残る頭を押さえながらよたよたしていた。



「私はクィレルと申します」

『クレル?』

「はい。あなたのことを1番に考えている、あなたの味方です」

『みかた?』

「そうです。安心してください。元に戻るまで私が――」

「やっぱりてめえか!」



クィレルがユイの手をとったとき、部屋のドアが開き、シリウスが怒鳴り込んできた。

ユイは驚いてクィレルにしがみついた。

様子がおかしいことに気づいたシリウスが、眉間に皺を寄せる。



「どうだったシリウス?いた?」

「いたにはいたが……」

「……あー、えーと、やっかいなことになったね」



シリウスの怒鳴り声を聞いてかけつけたリーマスがいち早く状況を察知した。

バタバタと階段を駆け上がってくるたくさんの足音を聞き、素早くドアを閉める。

その隙に、姿を見られるわけにはいかないクィレルが舌打ちをしながら姿をくらませた。



『あれ?クレルどこ?』

「仕事だよ。“クレル”のことはみんなに内緒なんだ。できるかな?」

『あい!』



舌足らずなしゃべり方をするユイを見て、シリウスも理解した。

違和感の正体は、ユイがさらにひと回り小さくなっていることだけではない。

何が原因か知らないが、さっきとは違い、中身まで幼児化しているのだ。



「あの野郎、すりこみしようとしてやがったのか」

「反応が早すぎて怖いよね……さ、戻ろう。みんなが心配している」



リーマスは苦笑いしながらドアを開けた。

廊下には子ども達が勢ぞろいしていた。



「見つかった?」

「何があったの?」

「なんかさらに小さくなってない?」



次々に質問が浴びせられ、結局そのまま部屋で説明をすることになった。

話すわけにはいかなかったクィレルの件を適当にごまかしたため、話し終えても子ども達は首をかしげていた。



「確かにさっきの子とそっくりだけど……」

「本当にユイ本人?」

『あい!』

「……ユイ?」

『あい!』

「ユイー」

『あいー!』



ユイは名前を呼ばれるたびに、ピシッと手を上げた。

戸惑いはあっというまに消え去った。

女性陣を中心に、かわいいかわいいとあちこちから声があがる。

そんな彼らを、大きなベルの音が現実に引き戻した。



「ねえ、これ、まずいよね?」

「そうね……まずいわね」

「すっごくまずいと思う」



スネイプの存在を思い出し、ハリー、ロン、ハーマイオニーは頷き合った。

しかし、他の人は違った。


トンクスは迎えを気にせず豚の鼻を作ってユイを喜ばせ、玄関に向かうシリウスは鼻歌を歌い、ついていくリーマスも楽しそうだ。

フレッドとジョージにいたっては、大喜びしている。

スネイプの記憶がないなんてすばらしいというのが共通意見だった。


ハリーは廊下に顔を出し、シリウスとスネイプの言い合いを聞いた。

肖像画の声が邪魔でよく聞こえないが、揉めているのは間違いない。



「――モチヅキ!」



屋敷内にユイを呼ぶ声が響いた。

返事がないとわかると、スネイプは家の中に入ってきて、名前を呼びながらユイを探し始めた。

周囲を見回し、肖像画のカーテンを閉めているリーマス達の横を通り、階段を上ってくる。

眉間の皺がどんどん深くなっていった。



「どうするの?」



ハリーは部屋の中に引っ込み、ひそひそ声で話した。



「全部屋探す気だよ」

「大丈夫。バレっこないわ」



ケラケラ笑うトンクスの膝の上にいたユイは、いつの間にかきぐるみを着せられていた。

ドアに背を向けてじっとしていれば、ぬいぐるみに見えなくもない。



「でも――」



ハリーが口を開きかけたとき、勢いよく部屋のドアが開いた。
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