後日談

□受胎告知
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それにしても見れば見るほどハリーにそっくりだ。

先入観がそう思わせているのかもしれないが、しゃべらず目を閉じていれば、ハリーが座っていると思えるくらいには似ている。



「聞いたリリー?ハリーは僕にそっくりだって!」

『えっ』

「ことあるごとに問題児のあなたを引き合いにだされてかわいそうね」

「ひどいなリリー。僕に似て困ることがあるわけないじゃないか」

「ハリーはあなたに似ているというだけでセブルスにいじめられていたわ」

「あいつの性格が悪いせいだよ」

「いいえ。ジェームズ、あなたが昔セブルスをいじめたせいよ」

『えっと、あの……』



ジェームズも悪いが、スネイプも大人気ないと思う。

じゃなくて。



「ああ、その紅茶、真実薬入りなんだ」

『はい!?』



心を読まれているのかと思ったところに真実薬なんて言われ、ユイはむせてあやうく紅茶を噴きだすところだった。

「冗談、冗談」と笑っているが、ジェームズが言うと冗談に聞こえない。

薬を盛られていることに気づかず飲んだなんて知られたらスネイプに怒られるからやめて頂きたい。

というかいい加減この状況を誰か説明してほしい。



「気にしたら負けだよ」



またしても心を読んだかのようにジェームズが言った。

それから少し俯き加減になり、眼鏡の上の隙間から意味ありげな目でユイを覗いた。

たぶん、ダンブルドアの真似だ。



「ここは君の頭の中であり、僕たちの心の中でもある」

『……リリー、どういうことでしょう?』



ジェームズはダメだ。

早々に見切りをつけたユイは、リリーに話しかけた。

リリーは斜め上を見るようにして考えたあと、「気にしたら負けよ」と笑った。







「お礼を言いたかったんだ」



眼鏡をくいっと上げたジェームズは、先ほどまでとは打って変わって真面目な雰囲気で話し始めた。



「僕の親友達はみんな君に助けられた」

『2人がそれぞれ戦った結果です』



シリウスを救うための作戦は、シリウス自身が考えた。

ホグワーツの戦いのときも、ユイが直接助けたわけではない。

それぞれがそれぞれの力で、幸運を掴み取ったにすぎない。


ユイがやったことと言えば、事前にこれから起こることを話して危険を知らせただけだ。

そして、危険を知らせることができたその“記憶”は、リリーとジェームズの死を確定させる材料にもなった。



「僕はそれでよかったと思うよ」



ジェームズは眼鏡の奥のハシバミ色の目を細めた。



「友人を見殺しにするくらいなら、死んだほうがマシだ」

『……死んだほうがマシなんて、言わないで』



かつてピーターに杖を向けながら言ったやりとりを繰り返し、喉の奥が詰まるのを感じた。

あえてあの時の言葉を出した意味を考えると胸が熱くなる。

ジェームズの親友達は、今も3人なのだ。

ああやっぱりジェームズはハリーの父親で、リリーが認めるだけの男なんだなと初めて思った。



「僕は正義の男なんだから当たり前さ」

『それはどうですかね……正義の男はいじめなんてしませんよ』

「ただ仲が悪かっただけじゃん。君はちょっとどころじゃなくスネイプに肩入れしすぎなんだよ」



ジェームズはおもしろくなさそうに口を尖らせた。

いつの間にか最初の表情に戻っている。

「リリーもそう思うだろう?」と顔を横に向け、リリーは迷ったあげく頷いた。



「でもそれでいいのよ。そのおかげでセブルスは救われたんだもの」

「別にあいつはどうなってもよかったけどね。密告者なんだから罰を受けて当然だ」

『ちょっと正義の男!ピーターとの差!』



堂々と差別をする正義の男なんて聞いたことがない。

というかリリーはまだしもジェームズが正義は違和感がある。

突っ込みどころが多すぎて対処しきれないでいると、ジェームズは「だってあいつ友達じゃないしー」と開き直った。

やはりジェームズはダメだ。

さっきの感動を返してほしい。
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