第一幕
□11.スリザリン
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1週間も経たないうちに、エメリーはレギュラスが今年の新入生の中でも特に注目視されている人物だということがわかった。
寮や学年が違うのにレギュラスの名前を聞かない日はないし、大広間にいるときは常に誰かに囲まれているからどこにいるのかもすぐわかる。
それは同級生であったり上級生であったり、男の子だったり女の子だったり、いろいろだった。
リリーは去年のシリウスも同じようなものだったと言ったが、エメリーにはあまりピンとこなかった。
「ブラックの時は遠巻きに見ている人が多かったからじゃないかしら?」
リリーは日差しが差し込む廊下を歩きながら言った。
「純血の生徒の中では、悪口の方が多かったみたいよ」
『え!?そうなの?』
「エメリーは医務室に行っていたから知らないかもしれないけど、去年の組み分けの儀式が終わった後、大広間はずっとざわついていたんだから」
リリーは少し眉をしかめた。
正義感が強いリリーは、陰口や差別が嫌いなのだ。
悪口を言っていた人たちを“純血の生徒”とひとくくりにしてしまった自分に嫌悪感を示したのだろうとエメリーは思った。
「彼女達が言うには、ブラックの家って、純血の中でも王族のようなものらしいわよ」
『王様!?』
そういえばダンブルドアがそんなことを言っていたなとエメリーはクリスマスを思い出した。
「自称、ね。でも最も古くからある家系のひとつみたいだし、魔法界に親族がたくさんいるようだから、かなりの力を持っているっていうのは本当みたいよ」
『全員スリザリン寮なんだっけ?』
「そうよ。だからシリウスがグリフィンドールに決まって大騒ぎだったらしいわ。まったく、馬鹿馬鹿しいわ」
『好きな寮に入れればそれでいいのにね』
「ええ。私もそう思うわ」
リリーはにっこりと笑って、窓枠にもたれかかった。
「セブだわ」
指差す先に、セブルスが歩いていた。
本を片手に、校庭を歩いている。
リリーと一緒にエメリーが手を振ると、セブルスは眩しそうに目を細め、軽く手を上げた。
『寮が違くても、友達になれるよね?』
「あたりまえでしょう?私とセブは親友だし、あなたとセブルスも友達のはずよ」
『そうだと嬉しいな。レギュラスとも友達になれるかな?』
「あらエメリー、レギュラスが気になるの?」
リリーは嬉しそうだった。
ジェームズがシリウスを見ながらニヤニヤする時と同じ顔だ。
「セブに紹介してって頼んでみましょうか?」
『それはセブルスに悪いよ……それに、夏休みにしゃべったことはあるんだ』
「え!?私聞いてないわ!」
『ほら、手紙にシリウスの家を見に行ったって書いたじゃない。あの時、玄関先でちょっとだけ会ってるの』
「ああ、あのときね」
私の家には来てくれなかったのにと、リリーは少し意地悪な顔で頬を膨らませた。
「次の休みには、絶対にうちに来てちょうだいね。セブの家も近いのよ」
『うん。来年は絶対に行く!リリーは兄弟いるの?』
「妹が1人いるわ。ペチュニアっていうの。でも、今は喧嘩中」
リリーが魔女で、ペチュニアがそうじゃないからだと、リリーは悲しそうに説明した。
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