後日談

□12.絵画
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「知ってどうする」

『作るんです』

「作る?誰の肖像画を?」

『ええと……』



ユイが言いよどんでいると、スネイプの表情はますます険しくなった。



「ユイ」

『はいっ』

「君はこの期におよんでまだ我輩に内密に事を進めるつもりかね?」

『言います言います!言うので顔近づけないでください開心術反対!』



もちろんこんなことでスネイプがユイに開心術を使ったりはしない。

しかし、スネイプはどうすればユイが白状するのか、正確に心得ていた。

こうして精神的にも物理的にも追いつめるか、ほんのちょっとだけ寂しそうな表情をするかのどちらかだ。

壁際に追いつめられたユイは、ぼそぼそと考えを話した。


スネイプはいい顔はしなかったが、止められることもなかった。

ダンブルドアの絵画の前にユイを立たせ、スネイプはデスクに戻った。

一部始終を見ていたダンブルドアは、「どうせこの会話も後から詳細を聞くのじゃろうから横で一緒に聞けばいいのに」とスネイプをからかった。



『先日日本に行ってきました。両親の事故後の処理などをダンブルドア先生がやってくださったと聞きました。ありがとうございます』

「君がそうすべきだとわしに教えてくれた」



当たり障りのない会話から始めたユイに、ダンブルドアは意味ありげなウインクをした。



『日本に行ったときに風景画が飾ってあるのを見かけたんですが、あちらにも人物の肖像画はあるんですよね?』

「もちろんじゃ。世界各地にある」

『それで――』



どう切り出そうかと考えた。

ダンブルドアはすっかりお見通しのようで、ニコニコと微笑んでいる。



「日本の絵画を描ける魔法使いはもちろん紹介できる。しかし絵画において最も大切なのは、記憶の刷り込み作業じゃ」

『本来は自分で行うことなんですよね?本で読みました』

「そうじゃ。いまここに並んでいる歴代校長も、生前自分の絵画に話しかけ、知識や特徴を刷り込んでいる」

『他人が代わりに刷り込むことは可能ですか?』

「あまり例がないことじゃが、皆無というわけではない。突然死を迎えた人物の場合、家族が代わりにその作業を行うこともある。多少偏った中身の絵画になるが、家族が故人を偲び会話をする分にはそれで十分じゃ」

『……やってみても、いいでしょうか?』



ユイは“何を”とは言わなかった。

それでもダンブルドアには伝わっていた。

「頼む」とダンブルドアは答えた。

ユイは、きちんと職務時間外にやることをスネイプに約束して校長室を後にした。




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