番外編

□事件は地下牢教室で起きている!
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とある日の昼下がり。

ぐらりと視界が揺れた。


バランスを崩して落ちているのだと気づいたのは、スネイプが何か叫ぶ声を聞いてからだった。

ユイはまずいと思って棚に手を伸ばしたが、足は既に脚立から離れている。

衝撃を覚悟して、ユイは目を瞑った。



『――……あれ?』



冷たい床に叩きつけられるはずだったユイの体は、柔らかい黒に包み込まれていた。



「馬鹿者が。気をつけろとあれほど――」

『っわあああああああっ!?』

「――なっ!?」



スネイプに抱きとめられたのだと気づいた瞬間、ユイはこともあろうに悲鳴を上げ、スネイプを突き飛ばした。

不意打ちにスネイプはよろけ、投げ出されたユイは尻餅をついた。

そして、スネイプが棚にぶつかった弾みで、棚からたくさんの瓶や缶、秤などが落ちてきた。



***



『痛たたたた……すみません……大丈夫ですか、教――!?』



頭をさすりながら体を起こしたユイは、一瞬で自分がとんでもないことを引き起こしてしまったことを悟った。

あたり一面、透明な瓶の破片や、なんの薬かわからない液体が散乱している。

しかし、ガラスで怪我をしたら?とか、毒薬だったら?などと心配している場合ではなかった。


そんなものは、消去呪文でなんとでもなる。

問題は、スネイプだ。


透明薬を被って服が透けているとか、ルシウス並みにさらさらストレートヘアーになっているとか、時間が逆行して子セブになってるとか、そういうおいしい類の話ではない。



『……え、ええと……』

「……」



スネイプも事態を悟ったようで、目を見開いて固まっている。



『……スネイプ教授、ですよね?』



なんとも間抜けな質問をするユイの声は見事なバリトンボイスで、眉間に皺を寄せたスネイプの姿は、ユイが毎日鏡で見る姿そのものだ。



『これは、もしや――』



ごくりと唾を飲み込み、ユイは石床に広がる液体を覗き込んだ。

鏡のように反射する水面には、すだれのような前髪に、消えることのない眉間の皺を持った、魔法薬学教授の顔が映っていた。



『……わあお』



まさに“もしや”の事態だった。

間違いなく、ユイとスネイプの体が入れ替わっている。


(なんてお約束な展開……)


展開についてこれず、スネイプは固まったままだ。

ユイは立ち上がり、いつもより高い位置からぐるりと部屋を見渡した。



***
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