不死鳥の騎士団

□26.OWL
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大広間の4つの寮のテーブルは片付けられ、代わりに個人用の小さな机がたくさん、奥の教職員テーブルの方を向いて並べられた。

一番奥に、生徒と向う形でアンブリッジが立っている。



「始め!」



試験管の合図が大広間に響くと同時に、何十枚という羊皮紙がいっせいにめくられた。

雲ひとつない青空の下、聞こえてくるのは優しいそよ風に緑の芝生が漣を立てる音――ではなく、カリカリとひたすら羽ペンを走らせる音だ。


あっという間にやってきた生徒達の将来を決める試験も、残すところあと1つだ。

試験終了10分前に答案を書き終えたユイは、問題の答えを考えるふりをしながら、アンブリッジの後ろで揺れる大きな振り子をぼんやりと眺めた。


結局、ハリーの閉心術は完成されなかった。

ハリーが浮かない顔で地下牢教室に現われたときは、もしかしたらと期待をしたが、そう上手く事は運ばなかった。

スネイプとハリーは終始険悪なムードだったし、OWLが近づけば近づくほど“頭を空にする”という作業は困難を極めた。


あと5分もすればフレッドとジョージが飛び込んでくるだろう。

そして、ハリーが夢を見る。


ユイは、数週間前にドラコが「ポッターから怪しい手鏡を没収した」と、意気揚々と話していたのを思い出した。

あの時はさすがに肝が冷えた。

今もハリーが退学にならずに試験を受けられているところを見ると、アンブリッジは結局鏡の用途を突き止められなかったのだろう。


鏡に向ってしゃべっているところを見られたハリーは、シリウスの居場所がアンブリッジに知られることを恐れ、その場で鏡を割ったらしい。

試験への不安から自己暗示をしていたと言ってアンブリッジの追及は逃れたようだが、依然として鏡はアンブリッジに没収されたままだ。


(せっかく両面鏡をハリーに印象付けようと思ったのに……)


シリウスと手軽に通信する手段があると分かっていれば、ハリーはアンブリッジの部屋に忍び込み、暖炉に頭を突っ込む必要はなくなる。

それに、シリウスが肌身離さず持ち歩ける手鏡なら、ハリーがヴォルデモートの偽の夢に踊らされることもなくなるはずだった。

それなのに、今や鏡は粉々で、直そうにもアンブリッジの部屋の引き出しの中だ。


(どうしていつも上手くいかないの!?)


ユイは、思い通りにいかないことに苛立ちと焦りを覚えた。

できるならハリーを神秘部に行く前で止めたいが、ここまで来るとほとんど手は残っていない。

このままでは、本当にもう、最終作戦を決行せざるを得なくなる。

絶対に失敗は許されない作戦だ。


(大丈夫、やれるわ)


羽ペンを置いて、ユイは顔を上げた。


ド……ン――


外から、始まりを告げる音が聞こえた。
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