不死鳥の騎士団

□11.秘密の魔法
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「ユイ」



名前を呼ばれて顔を上げると、隣にセドリックが座っていた。

窓から差し込んでいたオレンジ色の光は消え、代わりにろうそくの灯りが点々としている。

がらんとした図書館の端で、司書のマダム・ピンスがこちらを見ている。

心なしか、迷惑そうな顔に見える。



「ユイ、閉館時間だよ」

『え?もう?』

「ああ、僕らが最後だ。――貸して、」



セドリックはユイが枕代わりにしていた本を持ち、マダムの方へ歩いていった。

まだ働かない頭で、本を独占していて悪かったなと思いながら、ユイは急いで机の上を片付ける。


(今日も収穫なし、か)


シリウスに渡された本に隠された魔法の正体を暴こうと奮闘して早数日。

スネイプとの課外授業が再開されるまでになんとか見つけたかったが、もうそろそろタイムリミットだ。


(明日までに何とかしないと)


「閉めますよ!」



マダム・ピンスにせかされて急ぎ足で出口へ向かう。

セドリックはマダムに小言を言われながら手続きをし、図書館のドアを開けて待っていてくれた。



「このところ毎日図書館にいるね」

『5年生だから、ね。セドリックも毎日いるじゃない』

「まだクィディッチシーズンじゃないからね。それにしても、土曜日なのに朝からずっと図書館で勉強なんて、頑張りすぎじゃないか?」

『ふふっ、それを知ってるってことは、セドリックもずっといたんでしょ?』

「ユイが席を立つのを待ってたんだ」

『え。ごめん。言ってくれれば本独占しなかったのに』

「いや、本を読みたかったわけじゃなくて……」



首を傾げるユイに、セドリックは一瞬眉を下げて頬を掻くしぐさをしたが、すぐに爽やかな笑みを浮かべ、ユイを中庭に誘った。







空の端から夜が迫り、1つ2つと星が瞬き始めている。

そろそろ外を出歩いている生徒は指導の対象となる時間だ。

こんな時間に自由に動き回れるのは、監督生の特権だろう。

またドラコに職権乱用だと言われそうだが、気にせずユイはセドリックの後ろをついていく。

セドリックは、去年ドラコが白イタチに変えられた場所の近くのベンチに腰掛けた。



「今日は監督生の仕事はないの?」

『ドラコが張り切ってるから、私の出番はないみたい』

「そうか。頼もしいパートナーだね」

『ふふ、本当に。でも、すぐ調子に乗るから、まだ見回りは1人で行かせられないわ』

「ユイはマルフォイの保護者みたいだな」


セドリックは柔らかく笑った。

夜風が葉を揺する音に混じって、どこからかピーブズの高笑いが聞こえてくる。

また何か、ひっくり返して遊んでいるに違いない。



「ユイは今年OWLだよね?」

『ええ、そうよ』

「これはNEWTにも出ない。ユイの知識には本当に驚かされるよ」



セドリックは分厚い皮の表紙の本をパラパラとめくり、感心したように唸った。
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