番外編

□4-16 ダンスのお相手
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木曜日にグリフィンドールの生徒達が、金曜日にスリザリンの生徒達がそれぞれの寮監にクリスマス・ダンスパーティのことを告げられたのと同様に、ハッフルパフとレイブンクローの生徒も週末の授業後に舞踏会について説明を受けた。


そのため、土曜日に出されたクリスマスにホグワーツに残る希望者リストは、あっというまに生徒の名前で埋まった。

去年、一昨年はユイやハリーを含めて数えるほどしか名前を書き込んでいなかったのに、今年は4年生以上は全員残るようだ。


しかも、全員がダンスパーティのことで頭がいっぱいのように見えた。

誰もが何を着ていくか、誰と行きたいかなど、ヒソヒソと情報交換をして一足早いクリスマス気分を楽しんでいた。

ハリー達のようなごく一部を除いては、特に相手探しに意気込む生徒が多く、週末にはあちこちでダンスのパートナーを申し込む姿が見られた。

ザビニやらノットやらの誘いを断って寮を逃げ出してきたユイは、玄関ホールに差し掛かったところで、待ってましたとばかりに飛び出してきた2人に捕まった。



「ユイ、ダンスパーティの相手決まった?」

「決まっていないなら――いや、決まっていても僕らと行こう!」



飛び出してきたフレッドとジョージは、両脇に跪き、ユイの手を取った。

“年齢線超え”をやってのけた3人の組み合わせに、今度はなんだと野次馬が集まってくる。

ダンスパーティの誘いだとわかると、さらに人の輪が広がった。



『え?ごめん、もう1回言って』

「クリスマスの舞踏会」

「僕らと一緒にどう?」

『3人で?フォークダンス的な?』



それならいけるかもしれないとユイが前向きになると、フレッドどジョージは笑いながら同時に首を振った。



「何言ってるのさ姫」

「ダンスは2人で踊るものさ」

『そ、そうね』

「でも僕らは2人、ユイは1人」

『うんうん』

「どちらか1人を選ぶなんてできるかい?」

「できないだろう?」

「「それならユイが2人になればいい!」」

『はい?』



フレッドとジョージはユイの手を掴んだまま立ち上がり、呆けた顔のユイに杖を向けた。

嫌な予感がして逃げようとするも、掴んだ手が許さない。

調べるのに苦労したんだと言いつつ、フレッドとジョージは声を揃えて呪文を唱えた。



「「分身の術〜!」」

『な゛っ』



2人の杖から出てきた紫色の煙が、ユイを包み、たちまちユイの隣にもう1人のユイが誕生した。

どちらが本体でどちらが分身なのかの判断がつかないほどそっくりだ。

しかも、年齢線を越えたときと同じ、大人の女性の姿をしている。



「やったな兄弟!」

「ああ、大成功だ!」

『『うわ。気持ち悪っ!』』



同時に声を発した2人のユイに、笑いが起こる。

いいぞいいぞと悪戯仕掛人を褒め称える声や、「俺の分も分身させてくれ」とどさくさに紛れてお願いする者まで現われた。



『『ちょっと、これどうやって戻るの!?』』



体が2つあればと思ったことはあるが、実際分身してみると、鏡を見ているようでいい気分はしない。

どちらが本体でどちらが分身なのかの判断すらつかない。

向こうも同じ事を思っているんだと思うと、なおさら変な気分になる。



「ダンスパーティ、一緒に踊ってくれるなら」

「戻り方を教えてあげる」

『『踊れないから無理よ!』』

「それは残念」

「でもまあ、僕らとしては」

「「姫を取り合わなくてすむようになっただけでも大歓迎さ!」」

『『えっ、このままにする気!?』』

「ダンス」

「踊って」

「「くれる?」」



わざわざワンフレーズごとに区切ってニヤニヤするだけのフレッドとジョージに、ユイはついに折れてペアを組むことを承知した。

ハイタッチをして喜びながら、2人はそれぞれのユイに飴玉を渡す。

口に含んだ飴は、脱狼薬を濃縮したようなひどい味で、ユイは思わず吐き出した。



「「あ」」

『『え?』』



まずい、という顔をするフレッドとジョージの前で、2人のユイは磁石で引かれるように勢いよくぶつかり合った。



***
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