番外編
□4-16 ダンスのお相手
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「どうする兄弟」
「とりあえず医務室」
「だよな。賛成」
倒れたまま一向に目を覚まさないユイを見て、フレッドとジョージは頬をカリカリと掻いた。
飴が溶けるにしたがって徐々に融合する予定が、途中で吐き出したがために失敗したらしい。
大人の姿なのは老け薬要素が抜けきればそのうち元に戻るだろうが、問題はそれだけではなかった。
「生徒を実験台にしてはならないと、何度言えばわかるんです!?」
連れて行った医務室では、「またですか!」とマダムがおかんむりだった。
マクゴナガル先生を呼んでくるとプリプリ起こりながら、マダムは出て行った。
それと入れ替わりにハリー、ハーマイオニー、ロンが入ってきて、ベッドを取り囲む。
身を起こしてキョロキョロと周りを見渡したユイは、抱きついたハーマイオニーに『誰?』と不安そうな声をあげた。
「え……」
「まさか……」
「記憶がないの?」
「ああ、グレンジャー」
「そこには触れてくれるな」
『記憶?――っ』
急に頭を押さえたユイを見て、5人はうろたえた。
予想外の展開が引き起こしたもう1つの問題がこれだ。
飴が原因なのか頭をぶつけたことが原因なのかは定かではないが、ユイは記憶を失っていた。
「僕、シリウスに知らせてくる!」
「シリウスに言ってどうするの?それより校長先生よ」
ハーマイオニーは青ざめた顔でハリーを追って医務室を出て行った。
「どうするんだよ」と兄達のしでかしたことに呆れながらロンが咎める口調で言うが、当の本人達は「そのうち戻るさ」とあっけらかんとしていた。
「とはいっても、何もわからないのは不安だろうから、いくつか状況を説明するよ」
「僕はジョージ」と言いながら、フレッドがユイの横に腰掛けた。
偽ってどうするんだよと呆れた目を向けるロンを尻目に、「僕はフレッド」と言いながらジョージが反対側に腰掛ける。
「ついでにこいつは弟のロン・ウィーズリー」
「さっきまでいたのがハリー・ポッターとハーマイオニー・グレンジャー」
「そして君の名前はユイ・モチヅキ」
「通称ラプンツェル――つまり、姫君」
「「僕ら悪戯仕掛人の神様さ!」」
『姫……神様……?』
「ああ」
「話せば長くなる」
フレッドとジョージは悪戯を思いついたときの顔で笑い、ユイに今までの学校生活のことを話し始めた。
――おもしろおかしく湾曲して。
「……で、そのスネイプってやつがとにかく嫌なやつでさ」
「常に見下した態度で、生徒をいびることが趣味で……こないだなんて……」
「あいつのせいで苦しんでいる生徒は多いから、僕らはなんとかスネイプを困らせてやろうとしてて……」
「そんなとき、あいつに一泡吹かせてやったのが、ユイなんだ」
「だから、神様なのさ」
『そのスネイプって人、よほどひどい人なんですね』
「そりゃもう!」
いつの間にかロンまで会話にまざり、いかにスネイプが陰険で最低な奴かという事をユイに吹き込んだ。
「ハリーなんて会った瞬間からあいつに目をつけられて、毎回の授業のたびに嫌味と減点の嵐だぜ」
「見たら一瞬でわかるぜ」
「いっつも眉間にしわ寄せて、いかにも悪人って面しているからな」