不死鳥の騎士団
□4.グリモールド・プレイス
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ハリーとユイを追い越し、ムーディ達が奥へと足早に進んでいく。
ハリーにウィンクをしたトンクスがかさ立てに躓くのを見て、ユイは微笑んだ。
サバサバした性格なのに、おっちょこちょいでかわいいトンクスも、ユイが救いたい1人だ。
リーマスと一緒に生き延びて、幸せになってほしい。
「……ダンブルドアを信じろ」
「今こそ行動を起こすべきだ」
「コーネリウス・ファッジは魔法使いである前に政治家だ!敵を見て見ぬふりをしている」
「シー、ちょっと声を抑えて」
「こうしている間にもやつは力を増している。すぐ行動を起こすべきだ!」
細くて薄暗い通路の先から、聞こえる声に導かれるように足を進めたハリーは、そこに名付け親がいることに気づき、自然と笑顔になる。
険しい顔をしていたシリウスも、こちらに気づき、表情を和らげた。
ハリーは駆け寄りたい衝動に駆られたが、シリウスが立ち上がるより早く入り口にモリーが現われ、ドアを閉めてしまう。
「ハリー、よかったわ無事で!」
モリーはハリーをあばら骨が軋むほど強く抱きしめた。
ハリーの肩越しに笑顔を送り、ユイにも歓迎の意を示す。
それから両手を伸ばし、ハリーを調べるかのようにまじまじと眺めた。
「ハリー、ちょっとやせたわね。でも、夕食は会議が終わるまで待ってね」
「え、会議って……」
「ダメ、説明は後。階段上がって左の部屋よ……ユイは、ジニー達と一緒の部屋でもいいかしら?」
ハリーを階段に誘導し一息ついたモリーは、ユイにも腕をまわした
最初に向けた笑顔といい、今のハグといい、ハリーとは違うということがなんとなく感じ取れた。
それでもユイは何も気づかないいふりをして、『お構いなく』と笑顔で答えた。
『スネイプ教授はもういらっしゃっていますか?』
「え、ええ……」
『一緒に帰るので、部屋は大丈夫ですよ』
「そう?……残念だわ。せめて夕食だけでも食べて行ったら?ジニーを助けてもらったお礼だってまだしていないし……」
『ジニーを助けたのはハリーですよ。でも、おばさんの手料理はとてもおいしいって聞いていたんで、できれば食べていきたいです』
「まあ嬉しい!じゃあ、とびっきりのを作らないとね」
『ふふっ、ありがとうございます』
モリーは腕まくりをして見せ、「楽しみにしてて」と笑いながらユイを上へ誘導した。
終始モリーの眼には戸惑いの色が見えていた。
ユイはスネイプの名前を出すんじゃなかったなと少し後悔した。
*