炎のゴブレット

□10日目
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ユイのローブを重くしていた水分を魔法で取り除き、スネイプは近くの木に寄りかかった。

1人でフラフラと歩いているユイが心配で追ってきたのに、自分だけ戻るわけにはいかない。

それに、このままユイがいなくなってしまいそうな気がしてならなかった。



『戻らないんですか?』

「……また変な気を起こさないか見張る」

『もうしませんよ。悪いのはピーターじゃなくて私なんだってわかりましたから』

「なんのことだ?」

『こっちの話です。ところで先輩、ずっと後をつけていたんですか?』

「違う!たまたま窓から見えて、様子が変だったから――」



途中まで言って、スネイプはしまったと思った。

スリザリン寮は地下にあるから窓なんてないし、ユイが歩いているのも見ることができない。

そのことに気づいたユイが『どこの窓から?』と首を傾けた。



「……どこでもいいだろ」



スネイプはぶっきらぼうに答えて、横を向いた。

詳しく聞かれると困る。

なにせスネイプがいたのは医務室だったのだから。

場所がバレれば、スネイプがジェームズ達からユイを庇おうとして怪我をしたことを言わなくてはいけない。

盾呪文に失敗して2人とも受ける羽目になったなんて、恥ずかしくて言えるはずがない。



『……医務室?』

「なっ」



いとも簡単にバレて、開心術かとスネイプは焦る。

が、ユイはスネイプの頬を指差し、『怪我してる』と眉を下げた。

髪の毛で隠れていたし、暗いから気づかれないだろうと思っていたが、横を向いた際に治療の痕が見えてしまったらしい。

表情から察するに、おそらく怪我の原因まで推測されただろう。



「僕の意思じゃない。気づいたら勝手に体が動いてたんだ。僕がわざわざやつらの杖の前に出るわけ――って、どうして泣くんだ!」



突然目からボロボロと涙をこぼし始めたユイを見て、スネイプは慌てた。

どこか痛むのかとか、ピーターが生きていることがそんなに辛いのかとかいろいろ聞いたが、ユイは首を振って『ごめんなさい』と繰り返すだけだった。



『私っの、せ…で……』

「僕が勝手にしたことなんだからユイが責任を感じることないだろう」

『違…う……です』

「僕はいつものことだから慣れている」

『――んで、……っ……そんなに、優しいんですか』



『優しくされる資格なんてない』と泣きじゃくるユイを前に、スネイプはどうしていいかわからずにうろたえた。

泣かせるために後を追ってきたわけではない。

でもこれでは、スネイプが泣かせたみたいだ。



『ごめ……なさっ』

「だから!――頼むから泣くな」



スネイプはどうしていいかわからず、震えるユイの背に手を伸ばした。



***
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