炎のゴブレット
□2日目
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ユイはスネイプの後について地下牢教室までいき、調合を始めたスネイプの隣に座って話しかけ始めた。
『何作るんですか?』
「……」
『さっきは本を持ってきて下さってありがとうございます』
「……」
『ヒキガエルの話なんですが、私はそもそも肝じゃなくて心臓の間違いなんじゃないかなと思うんですが、先輩どう思います?』
「……」
『聞いてます?』
「煩い邪魔だ気が散る!なんでずっとそこにいるんだ!」
『好きだからです』
「は?」
突然の告白に頭がついていかず、スネイプは持っていたナイフと根生姜を落とした。
ユイはそれを拾って机の上にあげ、残りをきれいに切りそろえていった。
『興味なきゃ、あんな難しい本読みません』
同じ大きさに切り分けられた根をスネイプに渡し、次の作業にとりかかる。
本も見ないで正確な手順で下準備を進めていくユイを、スネイプは棒立ちでじっと眺めた。
「ああ、魔法薬か……」
『え?』
「いやなんでもない。――だからってわざわざ僕についてくることないじゃないか」
『迷惑じゃないですよ、むしろ大歓迎ですよ――ってのを先輩にアピールしようかと思いまして』
ユイは既に粉にしてあった月見草とナメクジの触角を鍋に入れた。
途端に水の色が濃い緑色になり、淡いエメラルドグリーンの湯気が昇る。
スネイプは「変なやつ」と呟きながら、渡された根生姜を慎重に入れ始めた。
『それよく言われます』
下準備を終えたユイは、再び腰を下ろし、作業を進めるスネイプを眺めた。
授業中は教える側で、ハリーへの嫌味とグリフィンドールの減点に勤しんでいるスネイプが、自ら調合する姿は久しぶりに見る。
まだ慣れが足りないせいか、真剣な眼差しで様子を伺いながら作業するスネイプは新鮮だ。
『魔法薬学、好きなんですね』
「だったらなんだ」
『私も好きですよ』
「変なやつだな」
『それさっきも聞きました。そうそう、魔法薬も好きですが、スネイプ先輩も好きですよ』
「なっ」
『――あ、すみません、途中で声かけちゃって』
根生姜を入れすぎて茶色くなってしまった液体をユイが覗き込むと、スネイプはガタンと大きな音を立てて仰け反った。
ユイがなんとか元に戻して『どうぞ』と鍋を受け渡したときも、スネイプは手の甲で口元を覆って固まっていた。
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