番外編

□3.14-16 甘味の素
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『やっぱり、お言葉に甘えて来ちゃいました。お菓子も持って来ましたよ!』



そう言って笑顔を見せるユイは、テキパキとお茶会の準備を始めた。

先生が寂しそうな顔していたから、と冗談めかして言っている。

気を使ったはずなのに、逆に気を使われてしまったようだとリーマスは思った。

淹れたての紅茶を2つテーブルに置き、ユイはリーマスの向かい側に座った。



『ルーピン先生って、スネイプ先生と同級生だったんですよね?』

「ああ。寮が違ったから常に対立していたけどね」

『ふふっ、今でも対立していますよね』

「そう見えるかい?」



苦笑いをするリーマスに、ユイはスネイプの好物を知らないかと尋ねた。



「残念ながらわからないよ。どうしてだい?」

『クリスマスプレゼントに何を作ったら喜ばれるか考えているんです。せっかくだから料理下手の汚名を返上したいなと思いまして』

「相談する相手を間違えているよ」

『嫌いなものを知っていそうだったので、逆をとるつもりで……お菓子とか、甘いものって興味ないですよね?』

「さあ……嫌いだと聞いたことはないけど……それは、私へのあてつけかい?」

『へ?いやいや、違います!』

「ははっ、わかっているよ。まったく、セブルスがうらやましいよ」



リーマスはわざとらしくがっかりした表情をとった。

眉を下げて、「私は甘いものが好きだけどね」とか「セブルスに食べられる甘いものはかわいそうだ」とか、ぶつぶつとユイに聞こえるように独り言を言う。

その手には乗らないぞと、ユイが聞こえないふりをしていると、ついにリーマスは直接「手作りお菓子が食べたい」と言い始めた。



「セブルスに黙っていてあげるかわりに、試作品を私に持ってきてくれないかい?」

『え?試作品って……』

「練習、するだろう?」



リーマスが悪戯めいた目をユイに向ける。

笑顔だが、半分脅しだ。


――お菓子をよこせ。さもなくばスネイプにばらすぞ。


と、そんなかんじだ。

もうクリスマスだというのに、ハロウィンを引きずっていらっしゃる。

先生って本当に腹黒ですね、という言葉を飲み込み、代わりに『甘いものに目がないんですね』と言ってユイは部屋を出て行った。



***
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