炎のゴブレット
□19.玉子と目玉
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ハリーは恐怖でグサリと刺し貫かれたような気がした。
スネイプとフィルチが振り返って地図を見た。
スネイプが地図に手を伸ばし、わかったぞという恐ろしい表情を浮かべている。
「ポッターだ」
「何かね?」
「ポッターだ!」
スネイプの目はフィルチの腕にある卵から、ムーディの手にある地図へと矢のように走り、スネイプにだけわかるやり方で2つを結びつけた。
そしてくるりと振り返り、突然ハリーが見えたかのように、ハリーがいる場所を睨んだ。
「その卵はポッターのものだ。羊皮紙もポッターのだ。以前に見たことがあるから我輩にはわかる!ポッターがいるぞ!透明マントだ!」
スネイプは目が見えないかのように両腕を前に突き出し階段を上り始めた。
あと数センチでハリーにぶつかる、というところで、ムーディが「そこには何もいないぞ!」と叫んだ。
「しかし、校長には謹んで伝えておこう。君の考えが、いかにすばやくハリー・ポッターに飛躍したかを!」
「どういう意味だ?」
「ダンブルドアは、誰がハリーに恨みを持っているのか、大変興味があるという意味だ!わしも興味があるぞ、スネイプ……大いにな……」
ムーディは足を引きずりながら、さらに階段下に近づいた。
スネイプはムーディを見下ろし、感情を押さえ込んだ冷静な言葉を発した。
「我輩はだた、ポッターがまた夜遅くに徘徊しているなら……それは、やめさせねばならんと思っただけだ。あの子自身の……安全のためだ」
「なるほど。ポッターのためを思ったと、そういうわけだな?」
一瞬、間が開いた。
スネイプとムーディはまだにらみ合ったままだ。
「我輩はベッドに戻ろう」
「今晩君が考えた中では、最高の考えだな――だが、まだ甘い!」
ムーディが勝ち誇った顔をする。
「深夜徘徊をやめさせねばならんのはポッターではない!」
「どういう意味ですかな?」
「卵を持っている可能性があり、君の研究室に押し入る動機がある人物がもう1人いるだろう。ポッターよりも、もっと身近に!」
「君がユイ・モチヅキのことを言っているのであれば、それはとんだ見当違いだ。規則破りの癖はあるが、我輩の研究室に夜中に忍び込むような愚かなことはせん」
「そうか。だが奇遇にも、わしはその人物をついさっき見かけた。――廊下で、気を失っていた」
「なんだと?」
「医務室に連れて行った。事情を聞くなら明日にしろ」
「君に命令される覚えは無い」
スネイプはすばやく階段を下り、無言でムーディの脇を通り過ぎた。
レンガ色だった顔は、一変しているように見えた。
ハリーはまだ動機が治まらないまま、スネイプが廊下を立ち去る音を聞き、フィルチが卵をムーディに渡して姿を消すのを見ていた。
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