炎のゴブレット
□19.玉子と目玉
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コツッ、コツッ、コツッ――という音がして、スネイプもフィルチも、階段の下を見下ろした。
2人の頭の間のわずかな隙間から、マッド-アイ・ムーディが足を引きずりなが階段下に姿を現すのがハリーの目に入った。
寝巻きの上に古ぼけた旅行マントを羽織り、いつものようにステッキにすがっている。
「パジャマパーティかね?」
「ポルターガイストのピーブズめが、いつものように物を放り投げていて――それに、スネイプ教授は誰かが研究室に沿いいた音を聞きつけ――」
「黙れ!」
スネイプが歯を食いしばったままフィルチに言った。
唸るムーディの魔法の目がスネイプに移り、それから紛れもなくハリーに注がれた。
驚いてパックリ開いた口が、ムーディがこの場の状況を完全に見通したことを物語っている。
「スネイプ、今聞いたことは確かか?誰かが君の研究室に押し入ったと?」
「大したことではない」
「いいや。大したことだ。君の研究室に押し入る動機があるのは誰だ?」
「おそらく、生徒の誰かだ」
スネイプのこめかみに、青筋がピクピク走る。
「以前にもこういうことがあった。我輩の個人用の薬剤棚から、魔法薬の材料がいくつか紛失した……生徒が何人か、禁じられた魔法薬を作ろうとしたに違いない……」
「魔法薬の材料を探していたというんだな?え?」
ハリーはスネイプの土気色の顔の縁がレンガ色に変わり、こめかみの青筋がますます激しくピクピクするのを見た。
「我輩が何も隠していないのは知っての通りだ、ムーディ。君自身がかなり徹底的に調べたはずだ」
「闇払いの特権でね、スネイプ。ダンブルドアがわしに警戒せよと――」
「そのダンブルドアは、たまたま我輩を信用なさっているのですがね」
スネイプは低い、危険をはらんだ声で答えた。
「ダンブルドアが我輩の研究室を探れと命令したなどという話は、我輩には通じない!」
「それは、ダンブルドアのことだ。君を信用する。人を信用する方だからな。しかしわしは――」
ムーディの顔がニヤリと歪んだ。
「洗っても落ちないシミがあるものだ、というのが持論だ。決して消えないシミというものがある。どういうことか、わかるはずだな?」
スネイプは突然奇妙な動きを見せた。
発作的に右手で左の前腕をつかんだのだ。
まるで左腕が痛むかのように。
それを見て、ムーディが笑い声をあげた。
「ベッドに戻れ、スネイプ」
「我輩にも、君と同じに、暗くなってから校内を歩き回る権利がある!」
「勝手に歩き回るがよい。そのうち、どこか暗い廊下で君と出会うのを楽しみにしている……ところで、何か落し物だぞ……」
ムーディは、ハリーより6段下の階段に転がったままの忍びの地図を指していた。