炎のゴブレット

□19.玉子と目玉
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マートルの手助けもあり、無事に第二の課題のヒントを手に入れたハリーは、暗い廊下に出て、忍びの地図を調べ、だれもいないかどうかチェックした。

ハリーがグリフィンドール塔に戻ろうと、一歩踏み出したちょうどそのとき、地図上の何かが目に留まった。


左下の角の部屋で、1つの点があっちこっちと飛び回っている――スネイプの研究室だ。

しかし、その点は、セブルス・スネイプではない……バーテミウス・クラウチだ。

しかも、飛び回っている点から少し離れたところに、ユイ・モチヅキの名前がある。


(なんで?)


1年前、地図でユイの名前を見つけたこが、シリウスの運命を変える大きなきっかけになったことをハリーは思い出した。


(――また、何かあるのかな?)


ハリーは好奇心に勝てず、行き先を変えて階段へと進んだ。

クラウチとユイが何をしているか見るつもりだった。



「わっ」



壁のタペストリーをめくり、近道を通っているとき、ハリーはうっかり騙し階段にずぶりと片足を突っ込んでしまった。

無様にグラっとよろけた拍子に、金の卵が抱えていた腕を滑りぬける。

慌てて抑えようとして、忍びの地図まで落としてしまう。

卵は長い階段を大音響をあげながら落ちていき、階段下のタペストリーを突き抜けて廊下に落ち、ぱっくり開いて廊下中に響く大きな泣き声をあげた。

忍びの地図は6段下で留まったが、ハリーが手を伸ばしても届かない場所だった。



「ピーブズ!」



フィルチの雄叫びだ。

バタバタと掛けてくるフィルチの足音がだんだん近くなる。

卵を見つけたフィルチは、これでようやくピーブズを城から追い出せると嬉しそうに大声を上げた。


もう少し階段を上がれば、忍びの地図が目に入る。

透明マントを着ていようが、地図を見ればハリー・ポッターの位置が示されている。


(もうダメだ――)


フィルチが地図を見つけるか、ハリーにぶつかるか、どちらが早いかと、ハリーが目を瞑ったが、ハリーが予想した展開は両方とも起こらなかった。

代わりに、もっと悪いことが起きた。



「フィルチか?何をしている?」



階段下に立っているのは、ハリーのピンチをさらに悪化させることのできる唯一の人物だった。

長い灰色の寝巻きを着て、スネイプはひどく怒っていた。



「スネイプ教授、ピーブズです。あいつがこの卵を、階段の上から転がして落としたのです!」

「ピーブズだと?しかし、ピーブズは我輩の研究室には入れまい」

「卵は教授の研究室にあったのでございますか?」

「もちろん、違う」



スネイプがバシッと言った。



「バンバンという音と、声が聞こえたのだ――」

「はい、教授、それは卵が……ピーブズめが投げたのです」

「――そして研究室の前を通ったとき、松明の火が点り、戸棚の扉が半開きになっているのを見つけたのだ!誰かが引っ掻き回していった!」

「しかし、ピーブズめにはできないはずで――」

「そんなことはわかっておる!」



スネイプはまたバシッと言った。



「我輩の研究室は、呪文で封印してある。魔法使い以外は破れん!」



スネイプはハリーの体をまっすぐに通り抜ける視線で階段を見上げた。

それから下の廊下を見下ろした。
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