炎のゴブレット

□13.ハンガリー・ホーンテール
3ページ/5ページ

神妙な面持ちで廊下を歩くハリーに、いつも通り四方八方から野次が飛ぶ。

ハリーはそれらを無視してユイを探した。


中庭に出てすぐにセドリックがいることに気づいた。

ベンチに横になり、ハッフルパフの生徒に囲まれている。

ハリーは迷ったが、セドリックにもドラゴンのことを伝えようと決めた。


マダム・マクシームはフラーにドラゴンのことを伝えるだろう。

クラムだってそうだ。

昨日森から抜けるときにカルカロフらしき人影とすれ違った。

クラムを有利にするために、第一の課題が何か探りに来たに違いない。

セドリックだけ知らないのは、フェアじゃない。



「セドリック、話があるんだ」

「え?いいよ」



ハリーが声をかけると、セドリックは飛び起きた。

「汚いぞポッター」とハリーを罵る友人に苦笑いを向けながら、セドリックはハリーについて数メートル離れた場所に移動した。



「ドラゴンだよ。第一の課題は、1人に1頭だ」

「ドラ……え?本当に?」



セドリックは信じられないといった顔をした。

そりゃそうだ。

ハリーだって未だに昨日見たドラゴンと戦わなきゃいけないなんて信じたくない。



「このことを、フラーとクラムは?」

「知ってる」

「ユイも?」

「これから言いに行く」

「……わかった」



ハリーへの悪口を止めない寮生たちに呼ばれ、セドリックはハリーにお礼を言って戻って言った。

ドラゴンと聞いたときのセドリックの目には恐怖感がチラついていた。

きっと今ハリーも同じ目をしているだろう。

ユイとダンブルドアに言えば、自分はドラゴンと戦わなくてはいけなくなる――。


(ドラゴンなんて、無理に決まってる!)


昨日の夜からずっとハリーは恐怖と戦っていた。

ユイにドラゴンのことを教えるのは絶対だ。

問題は、2人で戦うことを提案するかどうかだ。

言えば自らドラゴンの餌食になりにいくことになる。

言わなければ第二の課題に1人で臨むことになる。


(くそっ!僕の意気地なし!)


「ピリピリしているなぁ、ポッター」



嘲るような声が聞こえ、ハリーは辺りを見回した。

声の主の顔は見たくないが、一緒にユイがいるかもしれない。

キョロキョロするハリーを、ドラコ・マルフォイが木の上から文字通り見下していた。



「ユイの足をひっぱるなよ?――父上とお前の賭けをしたんだ。お前が試合で10分ももたない方に賭けた」



ドラコが木から飛び降りると、どこからわいてきたのか、スリザリンの取り巻き連中がぞろぞろと集まってきた。



「でも父上は、5分も持たないってさ」

「君の父親がどう思おうと知ったことじゃない!」



ハリーは大股でマルフィの目の前まで歩いていき、そのままの勢いで腹を押した。

「う……」と一瞬呻いたマルフォイが持ち直すより早く、ハリーはたたみかける。



「父親は邪悪で残酷だし、君は卑劣だ!」



そう言って背を向けると、直後にバーンという大きな音が聞こえた。

ハリーが急いで振り返ると、ちょうどマルフォイが立っていたあたりに、純白のケナガイタチがいた。



「背後から襲うようなやつはけしからん!」



怒れるムーディが義足を引きずり、建物から出てきた。

手にした杖は、まっすぐに白イタチを捕らえている。



「この鼻持ちならん、臆病で、卑劣な、こわっぱめ!」



ムーティが吼え、杖を動かすと、イタチは空中に2,3メートル飛び上がり、バシッと地面に落ち、反動でまた跳ね上がった。

ケナガイタチは苦痛にキーキーなきながら、だんだん高く跳ねた。


(マルフォイのやつ、いい気味だ!)


ハリーは笑った。

中庭にいた生徒達も、脚や尻尾をばたつかせ、なすすべもなく跳ね上がり続ける白イタチを見に集まってきては次々と笑った。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ