番外編
□3-18 寝不足にご用心
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真冬の図書館は、空気が冷え切っていた。
いくらでも魔法で暖めることができるだろうに、地下牢教室といい図書館といい、どうしてこんなに寒いんだろうと思いながら、ユイは鼻をすする。
少しでも暖かいところ……と日の当たる窓際の席につき、古臭い本の束を机に載せる。
ユイは片っ端から開いては閉じを繰り返し、ヒッポグリフの裁判に使えそうな資料を見繕って外へ出た。
『――っくしゅん』
寒空の下、くしゃみをしたユイは、マフラーを口元まで引き上げ、本を抱えてハグリッドの小屋へ走る。
1日中暖炉の火が途絶えることがないため、ハグリットの小屋は非常に温かい。
ハグリッドはハーマイオニーとユイにココアをご馳走してくれた。
熱すぎるココアが冷めるのを待つ間にハーマイオニーとたわいもない会話をし、「もっとゆっくりしていけばいいのに」というハグリッドにココアのお礼を言ってユイは再び冷たい風の中を走った。
(1日が30時間あればいいのに)
ハーマイオニーが資料を探す手伝いをし、シリウスと魔法の練習をし、ルシウスとの取引のことを考え、脱狼薬の改良を試み――。
時間はいくらあっても足りなかった。
「いいかげん寝たら?」
『うーん、もう少し……』
パンジーとのこの会話ももうお決まりになってしまった。
おやすみの挨拶代わりになりつつあるやり取りをし、パンジーがベッドに入ってから、ユイは羊皮紙を引っ張り出して宿題に取り掛かった。
***
(眠い……)
リーマスが新たな魔法生物を持ち込んで説明をするのを、ユイはボーっとした頭で眺めた。
話の内容がちっとも頭に入ってこない。
何の生物を持ってきたのかがわからないほどに意識が朦朧としてきた。
(まずいわね……授業に支障がでるのは避けなきゃ)
今日はハグリッドの小屋に行くのはやめて、さっさと宿題をしようかなと考えているところで、リーマスが授業の終了を告げた。
(うぇ。今日何やったのか全然わかんない)
「宿題は来週の水曜日までだ。ああ、それから、ユイはちょっと残ってくれるかな」
『は、はいっ』
(あわわわ、怒られるっ)
授業を聞いていなかったのがバレたと思い、リーマスの所に行ってすぐに頭を下げたユイが顔を上げると、その額にリーマスの大きな手のひらが当てられた。